第6話 高島おばけ

### 田中の奇怪な旅路: 小樽の蜃気楼と高島おばけ


---


**シーン1: 小樽への到着**


田中は、積丹半島で奇岩伝説に遭遇した後、謎めいた力に引き寄せられるように、小樽の港町へ足を運ぶ。古びた石造りの倉庫街が立ち並び、海からの冷たい風が田中の肌を刺す。街はどこか物寂しげで、不気味な雰囲気が漂っていた。


田中は、地元で語り継がれる奇妙な話、「高島おばけ」についての噂を耳にする。この幽霊は、蜃気楼に姿を現すと言われており、特に霧が深くなる夜に現れるという。


**田中(独白)**

「蜃気楼か…幻想が現実になる瞬間があるとはな。だが、この高島おばけというのはただの噂話じゃないようだ。」


彼は興味を抑えきれず、夜の小樽の高島岬へと向かうことに決めた。


---


**シーン2: 高島岬での不思議な現象**


その夜、田中は高島岬に立ち、海をじっと見つめていた。月明かりが海面に反射し、遠くにはうっすらと霧が漂い始めていた。突然、海面がゆらめき始め、目の前に蜃気楼が現れる。


幻想的な光景が広がり、遠くに古い船がゆっくりと近づいてくるように見える。その船の甲板には、人影がぼんやりと揺らめいていた。


**田中(心の声)**

「これが…高島おばけか?」


しかし、蜃気楼に現れた人影は一人ではなかった。次々と不気味な影が浮かび上がり、その中の一人が明確に田中に向かって手を振っていた。それは、かつてこの岬で行方不明になったとされる女性、**高島おばけ**の姿だという。


---


**シーン3: 高島おばけの出現**


突然、冷たい風が吹き、霧が急に濃くなる。田中はその場に立ち尽くし、目の前で形を持った幽霊のような存在を凝視する。その姿は徐々に鮮明になり、長い髪を持つ女性の幽霊が、彼のすぐ近くまで迫ってきた。


**高島おばけ(囁くように)**

「ここで何をしているの…?帰る場所を探しているの?」


その声は風に乗り、かすかに耳元で響く。田中は幽霊の目を見つめ、その哀しげな表情に何かを感じる。


**田中(独白)**

「彼女は何かを伝えようとしているのか…?」


---


**シーン4: 幽霊との対話**


田中は恐怖心を押し殺し、幽霊に向かって静かに話しかける。


**田中**

「お前は何を望んでいる?俺に何を伝えたい?」


幽霊は一瞬沈黙し、手を田中に差し出す。


**高島おばけ**

「私の魂はここで囚われている。かつて私は愛する者を待ち続け、そしてこの海で死んだ。今もその悲しみから解放されないままだ…」


田中はその言葉に耳を傾ける。彼女の哀しみと孤独が伝わり、彼は自分が何をすべきか悟る。


---


**シーン5: 運命の解放**


田中はふと手元にあった、積丹半島で拾った奇岩の一部を取り出す。それが何かしらの力を持っていることを直感的に感じ取った彼は、その奇岩を海に向かって投げ入れた。


すると、蜃気楼が一瞬にして消え、幽霊もまた霧の中へと溶け込んでいった。


**高島おばけ(遠くから)**

「ありがとう…これで私は…」


幽霊は消え去り、田中は静かな海を見つめながら立ち尽くす。風がやんだその瞬間、彼は一つの使命を果たしたかのように、心の中に静かな達成感が広がっていた。


---


**エピローグ: 新たな旅立ち**


小樽での出来事が終わり、田中は再び旅路につく。彼はこの不思議な出来事を振り返りながらも、まだ解明されていない謎が残されていることを感じていた。


**田中(独白)**

「この世にはまだ、解き明かされていないことが多すぎる。だが、その一つ一つが俺を導いてくれるのかもしれない。」


新たな目的を胸に抱き、田中は次の旅先を見据えながら歩き出した。


---


【次回予告】


田中が向かう次の場所は、さらに北の寒冷地、北海道の最果て――その地には、伝説の雪女が待ち受けていた。果たして彼は、この新たな脅威にどう立ち向かうのか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る