第56話
唇を離し、目を開けると、何度見てもきれいな、NATSUの彫刻みたいな顔があった。
「NATSUって純日本人?」
「両親、群馬県民だけど?」
笑うと、口角がきれいにあがるその唇に、触りたくなった。
震える指で下唇に触れてみる。
『NATSU――きっと恋人いるよね…』
そう思うと、イタズラで大胆だった右手を引っ込めた。
「いい子にしてろよ」
NATSUは、そんな私の頭を一回ポンとたたき、ポルシェのエンジンを始動させた。
この音がキライになりそうだ。
あんまり、遠くに行かないで欲しい。
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