第30話

NATSUについて二階の部屋に上がる。


その部屋はギターがいくつもあり、アンプもあった。

CDも山のように。




今田さんってバンドのギタリストなんだ。




にわかファンの私は、NATSU以外の" blue-black " のメンバーをよく知らない。



今田さんは、クローゼットから細身のシャツやタータンチエックのミニスカートを出した。



「……衣装?」


一瞬、



「おねぇ?」って聞きたくなったけど、

まだ90年代にはその言葉は浸透してないかもしれないと、喉で止める。




「ちょっと大きいかもしれないけど、好きなの着てみて、制服じゃどこにも行けないから」




NATSUはそう言うと、まだ部屋に座り続ける今田の襟足を掴んで、その部屋から出た。




こんなの着てステージ立つんだ。

さすがヴィジュアル系……。



AKGみたいなスカートに白いツルツルのシャツと黒いベストを合わせてみる。


それなり、になったかな?



「着替え終わりましたよ~」




そう部屋から叫ぶとNATSUと今田が



「おー!」



と大袈裟に言いながら戻ってきた。




そして、



床に置かれた、私の"携帯電話 に気づいたようだ。




今田さんはそれを拾い上げ、



「なにこれ?ポケベル?」



と、珍しそうに見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る