第9話

「クスリ…?」


「何だったかな?LSDだったかなぁ…。メンバーの誰かがやって捕まって引退したんじゃなかった? かなり昔の話…」



「ふぅん」



「これ歌うの?入れようか?」



「あ、やっぱりいい! あなたが歌ってください!」





……なんだ、危険なバンドだったんだ。



想定外の真実から、【blue-black】への関心が一気に減り、カラオケを早く切り上げたくなった。




チャラ男は流行りものをひたすら歌い続ける。


10曲くらい歌ったあと、


「休憩!」といって、ピッタリくっついて座ってきた。



「な…なに?」


「愛ちゃんだっけ? 可愛いよなぁ、俺と付き合わない?」



「……………え…」




……″笑うと前歯なくておかしいよ‥″



そう言いたいのを我慢し、



「もう帰る」




さっと席を立つ。




ーーこっちも危険かも。




「おいっ、なんで?」




部屋を出る私を、チャラ男が追いかける。






……そう


なんか、あのひと、


シンナーみたいな臭いがしたんだ…。



怖くなって、ビルを一気に駆け下り、繁華街へ飛び出した。






「おいおい!」



そのわたしの前を、突如現れた金髪で、そばかすだらけの男が阻んだ。





「逃げちゃだめやん」



「!」




すぐ後ろに携帯片手に チャラ男がやってきた。

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