第27話 光の王配候補者たち
族長の澄光に続いて美雨は部屋の中に入った。
部屋の中には長方形のテーブルと椅子が置いてありそのテーブルの片側に五人の男性が椅子に座っていたが美雨たちが入室してきたので一斉に椅子から立ち上がる。
「待たせたな、お前たち。美雨王女殿下をお連れしたぞ。美雨王女殿下はこちらへどうぞ」
「はい」
美雨はテーブルを挟んで五人の光族の男性たちと向かい合う位置に立った。
(この人たちが私の光の王配候補者たちね)
緊張しながらも美雨は五人の男性の顔を見る。
すると美雨から見て一番右側にいる男性と視線が合った。
黄金色にも見える金髪と金の瞳のとても整った顔立ちの男性だ。
しかしなぜかその男性は美雨のことを驚いたように見つめている。
(なんでこの人は驚いた表情をしているのかしら? もしかして私の姿のどこかがおかしいのかな)
美雨は他の者に気付かれないように視線だけで自分の姿を確認してみる。
巫女服は王女の正装のひとつだから光の王配候補者たちに挨拶をする分には失礼のない服装のはずだ。
しかも族長の澄光に会う前に自分でも鏡で確認したので変なところはないと思うので自分を見て驚いている男性が何に驚いているのかが分からない。
自分の衣服を確認してから再びその男性に視線を向けると今度は穴が開くぐらいの強い視線を美雨に向けていた。
美雨とその男性の視線が交わった。
その眼差しの強さに美雨の胸がドクンッと音を立てる。
それと同時に美雨は自分の頬が熱を持ったのを感じた。
きっと自分の頬は朱に染まっているに違いない。
美雨は慌ててその男性から視線を逸らして軽く呼吸を整える。
この場には他の王配候補者もいるのでひとりの人物といつまでも見つめ合っていたら不自然に思われるだろう。
呼吸を整えた美雨は凛とした声で王配候補者たちに挨拶をした。
「華天国第三王女の美雨です。よろしくお願いします」
美雨の言葉を聞き五人の王配候補者たちが美雨に頭を下げる。
「では美雨王女殿下。こちらにお座りください。これから光の王配候補者たちを紹介しますので」
「はい」
澄光に示された場所に座るとその隣りに澄光も座った。
二人が着席したのを確認してから五人の王配候補者たちも自分の椅子に座る。
美雨と王配候補者は向かい合う形になった。
「まずは私が彼らの名前と身分を簡単に紹介致します。その後に彼らからも自己紹介をさせますので質問がある場合は気兼ねなくご質問ください」
「分かりました。あの、澄光様。その前にお願いがあるのですが」
「何でしょうか?」
「私のことは王女殿下という敬称は使わないでください。澄光様はもちろんですがこちらの王配候補者の方たちも普通に美雨と呼んで欲しいんです」
「王女殿下ではなく美雨様とお呼びしてもよろしいのですか?」
「はい。私は女王も王配も同じ立場だと思っていますから。それに皆さんと仲良くするのにも王女殿下と呼ばれるより名前を呼び合った方が親しくなれると思うんです」
美雨の中では女王と王配に優劣はない。
それに自分の夫になる者たちには自分の名前を呼んでもらいたい。
「分かりました。ではこれからは美雨様とお呼び致します。お前たちもそれでいいな?」
澄光が王配候補者たちに念押しすると王配候補者たちは頷いて了承してくれた。
「では向かって右側の者から紹介します。私の長男の
次々に澄光は王配候補者たちを紹介していった。
どうやら部屋に入った時に美雨を驚いた表情で見ていたのは族長の長男の男性らしい。
(名前は光主って言うのね。澄光様の長男か。そういえば年齢の割に落ち着いた感じがするのは族長の長男だからかもね。それにしても何であんなに私を見つめてくるのかしら)
チラリと光主に視線を向けると光主の強い眼差しと再び視線が合ってしまい慌てて美雨は視線を逸らす。
光主と視線が合うだけで心臓の鼓動がドクドクと早くなってしまう。
(私の身体どうしちゃったんだろう)
今まで人と視線を合わせただけでこんな状態になったことはない美雨は自分の身体の異変に戸惑うばかりだ。
「次は王配候補者たちが自己紹介します。光主から順番に自分の名前と年齢、趣味などを美雨様に伝えなさい」
相手が自己紹介してくれるのに相手を見ないわけにはいかない。
美雨は緊張しながら光主の顔を見る。
光主は美雨に強い眼差しを向けたまま口を開いた。
「私は光主と申します。年齢は22歳。趣味というか得意なモノは馬術と剣術です。美雨様に相応しい男になれるように努力しますのでよろしくお願いします」
自己紹介が終わると光主の瞳が強い眼差しではあるが優しいモノに変化をした。
まるで愛しい者を見つめているかのようだ。
そして思わず見惚れてしまうような笑みを光主は浮かべる。
「…っ!」
(なんて素敵な笑顔なの……)
美雨の胸が一段と高鳴った。
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