「ゼフィロンとヴァルクアの王子が一つの体で転生し、無双の運命を歩む」
ADF
第1章第1話始まり
俺の名前はアエリオン。ここは惑星ゼフィロン、そして俺はこの小さな星の王子だ。星といっても、規模は大したことがない。人口も100万と少なく、過酷な環境がこの星の特徴だ。特に、突風が不規則に吹き荒れるのが厄介で、住めたもんじゃない。嵐のような風がいつ何時吹くかわからないんだ。気を抜くと簡単に命を落としかねない場所だ。
本音を言えば、こんな星から出て行きたい。だが、俺は王子だ。民を守る義務がある以上、逃げ出すことはできない。父王の言葉が常に頭に響く。民は我が宝だ、と。それでも、守る価値があるかどうか疑問に思うこともあるが、これは俺に与えられた役割だ。俺は生まれつき風を操る力を持っている。それがゼフィロンの王族の宿命だし、民も俺に期待している。
だが、そんな日常は今、大きく揺らいでいる。この星では、今まさに戦争が起きている。隣星のヴァルクア、水を司る星の連中が攻め込んできたんだ。人口は1000万でうちより多い。ゼフィロンとヴァルクアは、長い歴史の中でいくつかの小競り合いを繰り返してきたが、本格的な戦争になるのはこれが初めてのことだ。
理由?向こうの馬鹿王子が勝てると思い込んで調子に乗ったんだろう。スレイアとかいう名の王子だ。まぁ、俺に言わせれば浅はかだな。だが、こうして前線に立っている以上、簡単にはいかないのも事実だ。戦争は決して軽く見てはいけない。
それでも、俺が前線にいる限り、奴らの思い通りにはさせない。親父の元に攻め込むなんて絶対に許さない。この俺が、この戦いに決着をつけてやる。「さ〜てと、愛犬のトルネードと一緒に、一丁敵軍の拠点に行きますか〜!」俺は突風が吹き荒れる大地を見据えて、気合いを入れた。空は重い灰色の雲に覆われ、まるで戦場全体を支配するかのように、風が強く吹きつけている。俺の足元では、砂埃が絶え間なく舞い上がり、視界がわずかに歪む。
「走るぞ、トルネード!」俺の言葉に忠実な相棒、トルネードが地を蹴り上げ、一緒に疾走を開始した。彼の毛並みが風に逆らうように揺れるたび、その鋭い瞳が前方の地平線を鋭く見据えている。
「わかった、主殿!」トルネードは吠え、全力で走り始めた。ゼフィロンの空気は常にこの強風に支配されている。俺たちの星は、風の星と呼ばれるだけあって、風の力を利用するか、逆にこの風を避ける方法を知らないと、生きていけない。そんな環境が俺たちを強くしてきたのだ。
「前線部隊も俺に続け〜!」俺は後方の部隊に向かって号令をかける。ゼフィロンの兵士たちは少数精鋭、どんな過酷な状況でも耐え抜くために訓練されている。俺の背後で、重装備をまとった兵士たちが一斉に走り出した。
「だが、ほんと殺風景な星だな〜」俺は独り言のように呟いた。ゼフィロンの地表はほぼ全てが岩と砂。突風で草木は生えず、建物はほとんど存在しない。ごくわずかに残っているのは、風の影響を避けるために地下に作られた住居だけだ。
「まあ、そんなことはいいさ。この荒れ果てた大地だからこそ、敵軍の位置はバッチリ見えるしな!」
俺は遠くにぼんやりと見えるヴァルクア軍の陣営を見据えた。旗が風で揺れ、その向こうには高くそびえる岩の砦が見える。俺の心は戦意で満ちていた。
「俺がこのストームブリンガーで、風を切り裂いてやる!雑魚ども、どけどけどけ〜!ストームクレストー!」
ストームブリンガーを握りしめ、一気にダッシュをかける。俺の剣が風を巻き込み、その勢いで突風が生じた。敵兵たちは次々と風に巻き込まれ、10人はあっという間に倒れた。
「言ったろ?雑魚に用はないってな!」
俺の目はただ一点、敵軍の本拠地に据えられている。兵士たちを蹴散らしながら、俺は真っ直ぐに突き進んでいった。風と共に、俺のスピードは加速し、斬り払った兵士たちは大地に転がっていく。ゼフィロンの風が、俺の背中を押してくれているような感覚だった。
「俺が狙っているのは、ただ一人。馬鹿王子、スレイアだけだ!」
敵兵たちの叫びが風にかき消される中、俺はついに宿敵スレイアと対峙する。ヴァルクアの兵たちも、彼を守るために前に出ようとするが、俺の視線がスレイアにロックオンされた瞬間、その場の空気が凍りついたようだった。よう、馬鹿王子。お前は前線にいるんじゃなかったのか?
「馬鹿はお前だ、アエリオン。なぜこうも簡単にトップを走ってこれる? お前が死ねば、ゼフィロンの敗北だぞ!」
「何言ってんだ? 親父がいる限り、俺が死んでも負けじゃねえよ。」
「そうか、まあそれもいい。ここでケリをつけよう、俺はリヴァイアサルで戦うが、お前もストームブリンガーで戦うのか?」
「当たり前だろ! 素手でやるほど俺は愚かじゃないぜ。さっさと終わらせようぜ!」
アエリオンは鋭く笑い、手に握ったストームブリンガーを振り上げる。そして、空気を切り裂くように力を込めて技を放つ。
「スカイ・クリーヴァー!」
突風と共に、鋭利な風の衝撃波がスレイアを包み込む。周囲の草木が吹き飛び、地面は割れ、風の刃がスレイアに迫る。しかし、スレイアは瞬時にリヴァイアサルを振るい、衝撃波を弾き返す。
「チッ、卑怯な真似を…!」
その言葉と同時に、スレイアは一気に距離を詰め、リヴァイアサルを振り下ろす。剣と剣が激突し、金属音が響き渡る。お互いの斬撃は互角で、一太刀も浴びることなく、斬り合いが続く。
夕焼けに照らされる戦場。二人の王子はその中心で、次々と技を繰り出していくが、距離を取ればすぐに詰められ、技をぶつければ弾かれ、まるで鏡に映る自分自身と戦っているかのような拮抗状態が続く。
ゼフィロンの風とヴァルクアの水。それぞれの王子が持つ圧倒的な力が拮抗する中、時間だけが過ぎていく。互いの呼吸は荒れ、疲労が見え始めた。
「はぁ…はぁ…やっぱりお前、一筋縄ではいかないな。」
アエリオンは荒い息を吐きながら、再びスレイアと剣を交えた。その瞬間、スレイアが不敵な笑みを浮かべる。
「もういい、アエリオン。お前の強さは認めるが、ここで決着をつける。」
スレイアはリヴァイアサルを構え、最後の一撃に全ての力を込めていた。「ネプチューンスラッシュ!」
スレイアが叫ぶと同時に、彼の剣が激しい水の力を纏い、鋭い連続斬撃がアエリオンに向けられた。スレイアの動きは予想をはるかに超えた速さで、アエリオンの目にはほとんど見えないほどのスピードだった。
「くっ!この速さはなんだ…少しでも気を抜けば、やられる……!」
アエリオンは防御に徹し、必死にスレイアの攻撃をかわし続けたが、その時、不意に視線が崖の端に向かってしまう。そこには、彼の愛する姫の姿があった。
「な!?なんで姫があんなところに……!」
アエリオンの一瞬の隙を見逃さなかったスレイアは、その一瞬の間に彼の肩へ深く斬り込んだ。
「ぐっ……!」
アエリオンの口から血が噴き出し、斬られた肩に激痛が走る。彼はその場から大きく吹き飛ばされ、崖の近くへと倒れ込んだ。
「……痛みが……でも、姫のことを守らなければ……!」
アエリオンは痛みを堪え、姫の元へと必死に走り出す。
「姫!なぜこんな危険な場所に!?お城に戻ってください!」
姫は崖の端に立ちながら、静かにアエリオンを見つめていた。
「私は……人々が争う姿をこれ以上見たくないのです。どうか、戦争を終わらせることはできませんか?」
「姫、分かりますが、この戦争は何十年も続いている……すぐに終わらせることはできません。でも、ここでスレイアと決着をつければ、終わらせることができるかもしれません。」
姫は悲しげに微笑み、「それなら、ここから飛び降りるしかありません……」と小さな声でつぶやいた。
「待ってください!姫が飛び降りても、何も変わりません!」
アエリオンは慌てて姫に駆け寄ろうとするが、彼の心の中は乱れていた。
一方で、スレイアもその様子に焦りを感じ、「何をしているんだ!飛び降りるな!今、この空域には次元の歪みが発生しているんだ。下手に刺激すれば何が起こるか分からんぞ!」と叫んだ。
「次元の歪み……?そっちの心配か……」
アエリオンは皮肉を込めながら言ったが、姫に向かって再び駆け寄る。しかし、その瞬間、突風が激しく吹き付け、姫の体が崖から宙に浮き、そのまま次元の歪みに落ちてしまった。
「嘘だろ!?姫……!!」
アエリオンは絶望の声を上げ、スレイアも駆け寄るが、突風が二人を同時に吹き飛ばし、崖の端にしがみつくしかなかった。
「……アエリオン!剣を絶対に離すな!離せば、我々も次元の歪みに飲み込まれるぞ!」
「言われても、もう……肩に力が入らねぇ……お前が斬ったせいでな……!」
二人が必死に崖にしがみつこうとしているその時、再び崖が崩れ始め、二人はついに崖から落下し、次元の歪みに飲み込まれていった。
「……なんだ、意識はあるのに、体が消えていく感覚……スレイアも一緒なのか……?」
アエリオンは自分の意識が混乱し、彼とスレイアの魂が混ざり合う奇妙な感覚を感じ取っていた。
その時、視界が急に白く輝き始め、二人は見たこともない新しい世界へと落ちていく。
「ここは……一体……?」
景色がどんどん広がり、彼らは次第に小さな町へと引き寄せられ、最終的には一軒の家に吸い込まれるようにして、お腹の中に宿った妊婦の体へと入り込んだ。
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
「……彼の名前は……ガルムだ!」
新しい世界での誕生。それが彼らの再び始まる物語の始まりだった。へ…?ガルム?
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