第273話

――――――――――――――――――――…






トントントントン…




アイランドキッチンに立ち、手際よく

包丁で野菜を切るジュエル


目の前のカウンターには頬杖をついて

それを見守る泉水。



しばらくして支度が終わると、





コトッ…


 シャァァー… 


     …キュッ




器具と手を洗い、にこっと微笑み…





「ねぇ、今度 叶春かなは

 料理してみない?」




『えー? だってジュエルの方が

 上手いからなぁ…


 幻滅されたら嫌だしぃ』





・・・お互いの名前を呼び合う。





スッ…   シュルッ…






エプロンを置いて、

泉水の方まで回り込むと


泉水の肩にトン、と手を置く。






「そんなのするわけないじゃん


 じゃあ、今度一緒に作ろう?」





『それならやろっかなぁ


 あー… でも、

 “チャージ“ が足りないかも…』





ぎゅうっ…



うしろから抱きしめて、泉水の頭を撫でながらジュエルも囁く。






「良かった…


 こっちも足りなかったから」





『好き…』





想いをそのまま言葉に漏らし、

ジュエルの腕に手を添える。





立ち上がって 向かい合い、

見つめ合ったら、瞳の中に取り込まれた。





“好き“ という気持ちが 腕の中に捕らえられ、捕らえた方の“好き“ という気持ちと重なり…


視界を閉ざしたときに、唇も重なった。






途中でケトルがカチッと鳴る。


…が、閉ざされた視界はそのままに

唇の深いところで混ざり合ったまま、

漏らした吐息が ハートを形作り…




「叶春を、食べたい」



『うん… 


 いいよ… 


      好きにして?』





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