第94話

夏休み前だというのに、街には多くの人が溢れていた。


人々の動線が複雑に行き来する中で、足を止めて一点を見つめ 騒がしい様子の集団が目に付いた。




「あの人、かっこよくない?」


「ホントだぁ〜〜!

 めっちゃかっこいい〜〜!!」


「イケメン〜〜!!

 アタシ、ついてっちゃおっかなぁ〜?」


「ねぇねぇ、声かけてみない?」




(えっ?

  なんか街がザワついてる??



  あぁ…あの人のことね?



  確かにイケメンだわ。

  女どもがキャーキャー言うだけはある。



  確かにイケメンだけど…

  私にとっては、




  …キモっ。




  でしかない。




  前髪、イジりすぎじゃね?


  そんなに気になるなら、

  接着剤でも使って ガチガチに

  固めちゃったらいいんじゃない?


     …って思いますけど?



  うわ… 

  イチイチガラスに映った自分見て

     また前髪気にして…



  キモ神さまがご光臨なさってるわ!



  私のイケメンイメージの体現者か!



  だーから嫌いなんじゃ!

  イケメンなんて〜!! )





泉水のイケメン嫌いが即座に発動し、

心の中での呟きが加速していた。

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