(5月 -登校-)

第29話

5月病とは鬱陶うっとうしいものだ。

意欲は下がるし、

何事にも億劫おっくうになってしまう。

だが、恋をしている場合は違う。

5月病の病原体が胸の中で

焼け切れてしまうからだ。

恋羽に出会って早1カ月半。

花学の楽しさを満喫する射沙波であった。



射沙波

「・・・ということが実は

    あってだな」



姫崎

「お前の攻撃が当たらなかった!?

   マジか!?? 

   どんなバケモンだよ??」



射沙波

「チョット言う機会なかったけどよ、

    まぁ あのヒトは俺らとは人種が

    違うなぁ…って思ったわ」



姫崎

「ユラにそこまで言わすとか、

   信じらんねーな。

   んで? 

   もうその恋敵とはんねーの?」


射沙波

「もう戦んねーよ   

    まぁ、

    あの人はあの人で 

    悩んでっからなー・・・」


姫崎

「なんつーか・・・

   ユラくんったら、随分オトナに

   なっちまったんだねぇ~♪」


射沙波

「そんなんじゃねーよ

    だからって、

    好きな女が変わったわけでも

    ねーし、

    そのうちサラっと告っちまうから

    黙って見とけよな?」



姫崎

「おー、かっけーなー

   まぁ 楽しみにしとくわ」



射沙波

「つーか、

    そーゆーオメーはどーなんだよ?

    好きなオンナの一人や二人

     いるんだろ?」


姫崎

「ぶっ!


   ・・・ジュース吹いちまったじゃ

   ねーか!


   急にオレに振んなよ ったく…」



背後から自転車の音が徐々に近づいてくる




サバサバサバサバ・・・




このサバサバした音は・・・



二人の横につけると 

自転車から降りて口を開いた



織原

「ういーっす!

   今日もマジメに登校してんじゃん!」


射沙波

「俺はハンパがれぇなんだよ!

    高校はちゃんと卒業するって

    決めてんの」



織原

「まぁ よーく覚えとくわよ


   1年後も同じこと言ってると

   信じてるからね?」



姫崎

「モエちゃん、オハヨ」



織原

「オハヨ、ヒメサキくん


   毎日 コイツの相手、ゴクローサマ!」



射沙波

「っちいち ヨケーなんだよ!

    オメーはよ!」



織原

「!?


   ・・・チョット 

   あれ、なんかユラのこと見てない?」



前方を見ると、

道行く高校生たちが恐る恐る

学ラン姿の2人組の脇を横切っている様子が

うかがえる



射沙波

「あァん?  

    なーんか穏やかじゃないねぇ…」


姫崎

「あー・・・ 

   ”笛高フエコー”の制服だぜ 

   あれ」



私立・朽笛くちぶえ高校  

通称”笛高フエコー” 


戦闘偏差値80のヤンキー高で、

現代の男塾と言われている

悪名高い高校である


校舎内をバイクが走るわ


教卓には2日に1回は汚物が鎮座してるわで


とにかくはちゃめちゃでバイオレンスな

ハイスクール…という噂で有名だ




花学とは駅を挟んで正反対に位置するため、

そうそう通学中に出くわすことは

ないのだが・・・




学ランA

「見つけた…!


   あの蒼い目…

   忘れもしねえ…


   なぁ イザナミよ・・・?」



学ランB

「間違いねぇ、

     南中のイザナミと、

     ヒメサキだぜ…」

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