第21話

向けた背中には 

背番号8番の上に 

名前がプリントされていた


”YOUSUKE” 



射沙波

「・・・アンタ・・・ 

    ヨースケ

    っていうのか?」※



8番

「あぁ、

  みんなから大体 名前で 

  ”ヨースケ”って呼ばれてるよ」



何故か 

射沙波の心の琴線に触れるものがあった


考えてみれば 

恋愛なんてしてこなかったからな


喧嘩なんかよりよっぽど難しいし


よっぽど 胸の奥が熱くなる・・・



射沙波

(この人、

 見ず知らずの俺なんかに

 自分を重ねて まるで自分事のように

 話して来やがる・・・


 こんな奴 いままで出会ったこともねぇ


 たぶんこれからも・・・)





射沙波

「負けた・・・ 


    かなわねぇ



    ・・・俺の完敗だわ


    すげぇ人だな


    ・・・ヨースケクンは・・・」



このときから射沙波は 

ヨースケクンと呼ぶようになり

他愛もない話から 

世間話まで

いろんな会話を交わした



――――――――――――――――――――…



射沙波

「ははは・・・ 

    そりゃー、言わなきゃ

    ダメだろ・・・

 

    もう その子と自転車で

    二人乗りする位の仲なんだろ?


    ヨースケクンは奥手すぎんぞ?

    さすがに・・・!」



ヨースケ

「これが恋なのかもわかんないのに

     そんなの言えるわけないよ

     ~・・・!」



さっきまで「怖さ」を見せてきた

ヨースケクンの姿はどこにもなく

どこにでもいるような

優男のような印象になっているから

人間って不思議な生きモン



射沙波

「卒業までに告れることを

    祈ってますよ・・・"先輩"」



ヨースケ

「あまりプレッシャーをかけるなよ



     ユラとは性格が違うんだからさ…


     あーぁ・・・

     幼なじみ とかじゃなくて、

     なーんか ビビビっと恋が

     はじまんないかなぁ~…」




射沙波とはまるでタイプが違うから 

この人のようになりたい 

とは思わなかったが


近づきたい 

何か一つでも勝てるものを持ちたい


そんな風に思いながら 

人生で初めて 

目上の人に憧れる気持ちを抱いた




射沙波

「決めた・・・


    俺は、

    ヨースケクンよりも先に 告る!


    そしていつか、

    惚れた女を抱いてみせる!!」




ヨースケ

「ははは・・・ 

     何だそりゃ・・・


     でも ユラはなんだか

     案外、大物になるかもな…」






※【雪の結晶】に登場。

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