第37話 死人憑きとネクロマンサー 因果応報

暫く歩くと帝都の外れにある教会についた。


『私は教会は苦手ですから待たせて頂きますわ』


「私は大丈夫かもしれないけど……一応やめときます」


メリッサも復活した? 彼女も教会に入りたくないと言って教会の中にはついて来てくれなかった。


仕方なく、俺は教会に1人入り、その場にいた司祭に供養を頼んだ。


すると……


「埋葬料を含みまして全部で金貨1枚になります」


そう言われた。


これだけお金を払うと教会の敷地に5人を埋葬してくれ、祈ってくれるそうだ。


金貨1枚は約10万円。


そう考えたら前の世界より安いのかも知れない。


「お願いします」


そう、俺は答え、埋葬をお願いいした。


準備が終わるまで、そのまま立って待っていると5分も掛からず準備が終わった。


「それでは着いて来て下さい」


別の司祭に言われ着いていくと、穴が掘ってあり、その中にもう彼女達の遺体は入っていた。


「それではこれから埋葬させて頂きます」


穴の傍に立っていた男性が司祭の声に反応して杖を掲げた。


その瞬間大量の土が穴を埋めていった。


そうか……この世界には魔法がある。


土魔法を使うからこそ、こんな簡単に埋葬が出来るんだな。


埋葬が終わり司祭が祈ってくれ一緒に俺も祈り無事5人の埋葬が終わった。


俺は司祭にお礼を言ってお金を払い教会を後にした。


こんな事しても死んだ人間は浮かばれない。


だが、それでも俺は同じ日本人として彼女達を弔ってあげたかったんだ。


この世界には本物の女神様が居る。


きっとイシュタス様が来世は幸せに生きられるようにしてくれる。


そう、信じて祈った。


◆◆◆


教会の外に行くとメリッサが意識を使い意思を伝えてきた。


『リヒト様、この人は恐らく私と同様の存在、それもかなり禍々しい存在ですわ』


「そうね、だけど貴方達には悪さはしないわ……それにこの奴隷紋は私にも通じるみたいで貴方には手を出せそうにないもの……」


他人の手足や目を自分の物に出来る。


それは超常の者でしかあり得ない。


「それで、キミはいったい何者なんだい?」


「まず、私の名前は霧崎霊子、昭和時代に此処に転移して来たのよ」


そんな昔から転移召喚を行っていたのか……うん? でも……


昭和の時代から来たのならどう考えてもこんなに若い訳ない。


俺の本来の年齢に近い筈。


「アニメとかって何がやっていたか覚えている?」


「う~んとね……魔法使いハニーとかキューティサリーとか」


うん、間違い無く昭和だ。


しかも多分、俺の実年齢より少し年上か……もしかして……


イシュタス様に若返らして……違う。


それだったら『昭和からの転移』ではあり得ない。


「それならなんで、そんなに若いんだ」


「それはですねぇ~私が人じゃ無いからです!」


まぁ確かにそうだな。


普通の人は、他人の手足を自分につけたり出来ない。


「それは解るけど、それなら正体はなにかな?」


『リヒト様ぁ、化け物ですって……間違いありませんわ』


「当たりですね! 私は死人憑きという、化け物の一種よ! まぁ少女に当時、入っていたんだけど、そのまま巻き込まれて召喚されちゃったのよ」


「死人憑きって一体」


「う~んとね死体に憑りつく霊……場所によってはモウリョウとか呼ばれていますね」


死体に憑りつくなら腐ったりしないのかな。


「腐ったりしないのか?」


「普通は腐りますよ……腐ってボロボロの体になる前に他の死体に乗り移るんですが、この体の本来の持ち主、霧崎霊子が運が良いのか悪かったのかネクロマンサーだったんです……そのせいかこの体から出られなくなっちゃったのと……この世界の影響で進化して死人憑き(姫)になって、腐らなくなったんですよ」


「そうなのか?」


「そうなんです! あっ、良かったらステータスみますか? ステータス!」


「見せてくれるなら……」


霧崎※子 (※※歳)

神代※の※隷

LV 40

HP ※※※※

MP ※※

ジョブ ネクロマンサー 死人憑き姫(ゾンビクィーンに類似)異世界人 ※人で無い為ネクロマンサーの力は重なるものしか使えない。

スキル:翻訳.アイテム収納、※※※※


「まぁ、こんな感じですね……人間じゃ無いからあちこち虫食いになっていますね」


それは解ったけど……


「人じゃないとバレたら不味いんじゃないか?」


「そうですね……だから、基本的に誰にも見せないようにしています」


「そうか? だけど、神代※の※隷が気になるからちょっと見てみる……ステータス、あっやっぱり」


神代理人(15歳) 

LV 8

HP 155

MP 91

ジョブ:魔法剣士(神剣使い)

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)剣術スキル

エクストラスキル:若返り

剣:神剣ミステ(不破)※装備から外す事は出来ないし、他人に渡す事も盗まれる事も無い。反面他の武器は持てない。

奴隷:アリス ※終身奴隷 霧崎※子 ※終身奴隷

幽霊憑き:メリッサ ※祓う事は不可


やっぱり、あの奴隷契約が有効になっていたんだ。


「あれ、やっぱり有効だったんですね……それじゃ、不束者ですが宜しくお願い致しますね! ご主人様」


「それで良いのか?」


「正体を隠して生きるのは疲れますから構いませんね……ご主人様は私みたいな化け物が……あっ、幽霊に憑りつかれている位ですから問題無いですか?」


「まぁ、その通りだな……宜しくな」


「こちらこそ」


まぁ普通じゃないけど良いか。


◆◆◆


「ああっ、そいつは……」


大八車を返しに奴隷商に寄った。


「ああっ、運よく1人だけ蘇生に成功したんだ」


「そうかい、クソッ奴隷紋と奴隷の代金損しちまった……あんた……うっ……ハァハァ……ああっ、助けてーー助けてくれーーっ」


「どうしたんだ……」


「放っておいて良いよ! 死んだ5人の霊が彼奴を許せないって言うから連れて来ただけだから……」


そうかネクロマンサーの力か……


「許して、許してくれーーっ! 悪気は無かった、無かったんだぁーーーっ」


そう叫ぶと奴隷商人は狂ったように奇声をあげ、走りだし馬車の前に飛び出した。


大きな鈍い音がした。


『リヒト様……』


「ご主人様……」


「あいつは俺も好きじゃ無かったからこれで良いんじゃないか? 流石に見たいとは思わないから行こうか?」


『はい』


「そうですね、もし生きていても5人の恨みは深いからどうせ逃げられないからね」


俺は檻の中で死んでいる女性たちを見ていた時、彼奴を殺したくなった。


だが、それは法律があるから出来なかった。


また、人を殺せるかと言えば正直解らない。


だが、誰かが殺してくれるなら、それは凄く有難い。。


因果応報……悪人がただ報いを受けて死んだだけ。


それだけの事だ。













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