第18話 メリッサとアリス
「アリス……アリス、大丈夫か?」
「う~ん……はっ、リヒト様ぁぁぁぁーー」
メリッサには姿を消して貰い、アリスを揺さぶり起こした。
起きるなりアリスはしがみ付いてきた。
しかし、幽霊は怖くないと言っていたのに……どうしたんだ?
「アリスは幽霊は怖くないんじゃなかったのか?」
「幽霊は怖くないですが……その、あの姿は誰でも怖がると思います……」
アリスに話を聞くと、まるでゾンビの様な状態の女が、この世の全てを恨んでいる様な黒い目で俺を睨んでいたという。
「本当に?」
随分と俺の見ていた姿と違うんだな。
「ゾンビみたいと言う事は、腐った状態……そう言う事?」
「ええっ、所々骨が見えて、眼球も無く、本当に怖かったですっ! 一番近いのは腐りかけの青白い死体が立っているみたいでしたよ! まだあれならゴブリンの方がましに見えますよ」
全く違う……
俺には金髪色白のスレンダーな美女にしか見えない。
服装はどうなのだろうか?
「服装はどんな感じに見えた?」
「薄汚いボロキレを纏っていましたよ! あの……あんな傍に居てリヒト様は、恐く無かったのですか? 見た瞬間、アリスは怖いとか以前に心臓が止まるかと思いましたよ……あれは幽霊じゃ無くて……そう死霊……死霊じゃないんですか……怖いです!」
完全に見えている物が違う。
なんでだろうか?
『主よ……その問いに我が答えよう』
頭の中にミステの声が聞こえてきた。
『わかるのか?』
『絶対ではないが……主はこの世界で唯一の「神剣使い」だ。だから、魂と接する際に、その魂の「本来の姿」が見えるのだろう。少なくとも我が創造主イシュタス様には、焼き殺された人間であっても焼爛れた姿ではなく、本来の姿が魂として見える』
そうじゃなくちゃ、確かに女神なんてやっていられないよな。
確かに、俺が読んだ小説で何回も生き返る冒険者の話があって、その都度女神に会うんだが……串刺しや首チョンパや溶けた姿じゃ無かった。
『成程……ありがとうミステ』
『なぁに、この位容易い御用だ』
「リヒト様ぁ~ ブツブツと此処にリヒト様とアリス以外に誰かいるんですかぁ~怖いですよっ!」
誤魔化そうと思っていたが……
ちゃんと説明するべきだな。
「アリス……居る」
「嘘……リヒト様、居るんですか?」
アリスの目が恐怖からか泳ぎだした。
「ああっ、だが聞いて欲しい! 此処を綺麗にしてくれていたのは彼女、幽霊のメリッサだ! 彼女は俺達に害を与えない! それ処か家事を一部になってくれて、彼女のおかげでこの家に安く棲める。 そんな彼女を容姿が悪いだけで怖がるのか? 容姿のせいで嫌な思いはアリスも散々して来ただろう?」
これはズルいのかも知れない。
だが『アルビノ』の容姿で酷い人生を送ってきたアリスなら、この説明が一番良い……そう思った。
「そうですね……私だってさんざん、この容姿で酷い思いばかりして来ました……そんな私が、そんな事を言うのはおかしいですね。 アリスもう大丈夫です!」
これで大丈夫だ……案外早く解決出来たな。
「という訳でメリッサ出てきて大丈夫だ!」
「アリスさん……これからお世話になりますわ……メリッサですわ」
「宜しくです! めめメリッサさん……」
アリスの顔は引き攣っているが、あとは時間が解決してくれるだろう。
まぁどうにかなるさぁ。
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