第14話 対策

朝起きて、暫く経つと朝食が用意された。


別に部屋食を頼んでも問題は無いみたいなので基本、部屋食にして貰えるように頼んだ。


アリスの事を考えたら、その方が良いだろう。


イシュタス様の像に水と自分の朝食を少しとりわけ、手を合わせた。


眠そうな目を擦りながらアリスが起きて来たので朝食にする事にした。


「おはよう」


「おはよ~うございますぅ~」


本当に眠そうだ。


目を擦りながらアリスは椅子に座った。


もう食べ始めても良いか......


「いただきます」


「いただきますって何ですか?」


そう言えば、前の2回はドタバタしていて忘れていた。


異世界人からしたら知らなくて当たり前だよな。


「これは、俺が住んでいた地域での食事の前の挨拶なんだ」


「そうですかぁ~ それなら、いただきます! う~ん! 美味いですぅ~リヒト様ぁ~」


直ぐにアリスは食事に手を出しパクつき始めた。


今日の朝食は、パンと肉野菜のスープに卵焼き。


この世界ではごく普通の食べ物だ。


しかし、相当飢えていたんだな……


ハグハグハグと音が聞こえてきそうな勢いだ。


犬の獣人……言い方は悪いが前の世界のドッグフードのコマーシャルを思いだした。


今日から頑張らないと……


朝食を食べ終わり、今はお茶を飲んでいる。


そろそろ行くか……


「それじゃ、行ってきます!」


「リヒト様ぁ~どこに行かれるんですか?」


「働かざる者食うべからず! これから冒険者ギルドへ行って仕事をしてくる」


「そうですか……アリスはいったい、何をしていれば良いんですか?」


そうだな。


今迄ホームレスだったんだ。


今日くらいは休んで貰って良いんじゃないかな?


それに神代家の妻は一部の例外を除き妻は専業主婦だ。


これは代々『男は外で働く者、女は家庭を守る者』という家柄からだ。


尤もその家族も全員今は、亡くなり居ないけど……


「はい」


俺は銀貨1枚アリスに渡した。


「リヒト様、これは一体?」


「当分の間のお小遣い。 暫くは何もしないで良いから、好きにして良いよ! ただ、夕方には此処に戻ってね」


「アリスは、何もしないで良いんですか?」


「今の所はね、そのうち家事とか手伝って貰うから……」


アリスは驚いた顔をし、涙腺が緩みだした。


これは泣きそうだな。


「ううっグス、リヒト様ぁ~」


嬉しい涙だろうから放っておいても良いよな。


「行ってきます」


「ううっ、いってらっしゃい……ませ」


俺は軽くアリスをハグして宿屋を後にした。


◆◆◆


「そりゃ、お金に困る筈ですよ……もしかして世間知らずなんですか?」


いきなり受付のお姉さんに言われてしまった。


今、俺は冒険者ギルドの受付に来ている。


冒険者ギルドはただ依頼を受けたり依頼するだけの場所じゃない。


色々と冒険者の相談にも乗ってくれる場所でもある筈だ。。


だから、相談しに来た。


冒険者全員が、あれ程の宿代を払えると思わないからな......


「いや、そうではない筈……だと思いたいのですが、どういう所がでしょうか?」


あの、王女、優しいのか酷い奴なのか、金は持たせてくれたが、この世界について何も教えてくれず放り出した。


確かに俺はこの世界では、世間知らずなのかも知れない。


「あのですね……駆け出しの下位冒険者が風呂付の宿屋暮らしなんてしていたら、お金なんて貯まらないですよ。 それに一箇所に長く居るなら、宿屋じゃなくアパートメントか貸家を借りた方が良いでしょう」


「宿屋やアパートメント? 一体どの位で借りられるんだ?」


「宿屋に比べれば安いですよ! お風呂が外せない条件でも宿屋と同じ程度の部屋なら銀貨3枚位から探せます」


銀貨3枚、約3万円。


随分と安いな……


だけど、敷金や礼金、仲介手数料が要るんだよな。


「それで、手数料とか掛かるんですよね」


「それは勿論、ギルドの紹介手数料が銅貨5枚、これは書類作成代金込みですね。 あとは用意してくれる大家さんに毎月のお家賃を前払いで払えば良いだけですね」


これも前の世界と違う。


「それじゃ銀貨3枚と銅貨5枚で借りられると言う事ですか?」


「銀貨3枚のアパートメントならそんな物ですね」


そんな金額で借りられるなら、随分と生活は楽になるな。


日常品の購入で少し出費はかさむけど、一旦借りてしまえば、今後の生活は随分と楽だ。


問題は此処に居て良いかだな。


「それなら、幾つか物件の情報を見せて頂いても大丈夫ですか?」


「あっ構いませんよ……それでしたら」


受付嬢はチラシみたいな物を持ってきた。


色々な間取りの部屋や家の情報が書いてある。


今の状況を考えるなら、風呂と台所があって治安が良ければ問題は無い。


まだ、このまま王都に住み続けると決めてないから、借りるにしても安い所が良い。


「すいません、午後から、この三つの部屋を内見できますか?」


「内見? 見たいと言う事ですか? 大丈夫ですよ! それでは用意しておきますので、午後もう一度こちらに来て下さいね」


一緒に住む部屋だから、アリスと一緒に来た方が良いよな。

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