偽装感情と呪われた夢
@Ainsworth1450
プロローグ
愛が呪いを解くならば、「愛されない」というのは、解けない呪いに違いないのだろう。
* * *
多くの御伽噺、説話において、呪いは人々を脅かすものとして語られる。森にて眠る女の物語も、獣に変えられた青年の物語も、彼らを犯した呪いは、愛によってほどかれたという。まったく、都合の良いものだと、そう思う。
誰もが皆、己に呪いを抱えている。それは、短所や弱点だとか、そういう“運命”であると言い換えられるものだけど。とはいえ、そんな苦しみも、誰かと一緒にいることで乗り越えられるとするならば、やはり愛は呪いの万能薬なのだろう。
愛が人の呪いを解く。その苦しみも、誰かと一緒ならば分かち合える。
ならばやはり、「愛されない呪い」は、不治の呪いに違いないのだ。
『なら、あなたはそんな誰かを愛せる人間にならないとね。ユーリ』
そう言ってくれた人の声を覚えている。
そのときの自分は、まだ生き方も知らないような弱い子供で、己を必要としてくれる誰かに、縋るような生き方しかできなかった。
自分が、他の誰でもない自分である意味がほしい。
役に立つと、そう言ってくれるだけで良いのだ。
僕が、あなたと一緒に居ていいのだと、そう言って。
だから、そんな誰かに望まれるように生きた。そんな生き方をする自分に、多くの人は笑って喜んでくれた。だけど、その人だけは、どこか悲しそうにして。
…そんなの、君の人生じゃない。誰かの為じゃなくて、自分の為に生きなさい。
そうやって、自分を𠮟りつけるその人の言葉を、当時の自分は理解できなかった。今は、どうだろう。
今の自分は、自分の人生を生きられているだろうか。あなたの言う通り、誰かの為ではなく、自分の為に生きることができているだろうか。
そうすれば、僕は。
あなたの気持ちを、理解できるでしょうか。
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