檻の中の魔王と元聖女

第1話

一般人サラ。年齢18歳。


(早速ですが、魔王に捕まりました。大ピンチです)


ぐるぐる縄で縛られ冷たい固い床の上に座らされた。


「お前……聖女だったろ?」

石の階段に座り、片肘ついた魔王が質問してくる。


(それは前世での話ですが、さすが魔王、勇者の残党は生まれ変わっても始末するということですか。どうせ殺されるなら正直に言ってやろうじゃない)


「……ですね」

「本当にか?」


「ですです。なんか用ですか?」


魔王はショックを受けているのか、右手を顔に当て落ち込んでいるようだ。

「知性までは引き継げなかったか……」


失礼極まりない発言をされた。


確かに前世のサラは、ユリの花と称され、美しい所作と敬語を身につけていて、高潔で完璧な聖女だった。



目の前にいるこの魔王に殺されるまでは。



「記憶はあるのに、なんでこんな娘に?!」


「私に聞かないで」


生まれ変わって前世の記憶はあるものの言葉遣いや所々違うのだ。

サラはそっぽを向いた。


「本当に何なの? 私はもう神聖力がないのだから貴方の脅威にはならないはず」

「……その方が都合が良い」


魔王はサラの巻かれた縄の背中側を掴むと、サラを運びはじめた。

「今から拷問でもするつもり?」


目的地に着くと魔王は剣を出して振りかざした。

サラは斬り殺されると思い、恐怖で目を瞑る。

魔王はサラを縛っている縄を切った。ボロボロと縄が落ちていく。


「殺さないの?」


魔王はその質問には答えず、剣を仕舞った。


「ここは後宮の跡だ」

「監獄の間違いでしょ」


独房にしては広く、大きいベッドが置いてある。鉄の檻が部屋を囲んでいた。

部屋をキョロキョロ見渡していると後ろから重たい金属音がした。

「嘘でしょ?」

サラが振り返ると、魔王は外から檻の扉を閉めて鍵をかけている。


「ここで大人しくしていろ」

そのまま去っていく。


「何このヤンデレ展開~」

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