無能力者と呼ばれた者の逆転劇

ルイ

契約

 俺は、この世界の異端者だった

 能力を持っているのが当たり前の世界で唯一俺一人が能力を持たなかった


 けれどそんな俺にも友達が出来た

 名前は梔子明夜くちなしとうや

 彼は俺を無能力者というだけで差別せず俺を見てくれていた

 明夜がいるからこそ今の自分があると言ってもいい

 俺にとって明夜はそれほどまでに大きい存在だ



 俺は今、明夜と共に学校から帰っていた

「なあ明夜?」

「どうした?」明夜はコーヒーを飲みながら聞き返す

「今日さ、またあいつに呼ばれて金取られてさ...」

 あいつ、とは時業蜂起ときごうほうきと言う人物である

 端的に言うと不良でありこの学校の成績トップの人物だ

 素行不良、成績底辺なのだが能力だけでトップになっておりこの学校の教師たちも頭を抱えている人物である

 ちなみに能力は教師陣以外にはわからない

 そして俺はそんな人物に財布やサンドバッグなどの扱いを受けていた

「行かなきゃいいのにさ」と明夜は言うが行かなければさらにひどい扱いを受けるのだ

「でも行かなかったらもっとひどい目に合わされるんだぜ?」

「じゃあ俺から言ってやろうか?」そんなことを明夜はいうが俺は

「それだけは駄目だ」と即答する

 自分のせいで明夜が傷つくのはいやなのだ

「ふぅん。まあでも本当に耐えられなくなったら遠慮なく頼れよ」と言う

その時小さく時業のやつに一言言ってやる。と言ったことに俺は気づかなかった


 俺のアパートの前に着くと

 明夜はじゃあ、また基地で

 といって走って行ってしまった

「ん、じゃあ基地で」と俺も行ってアパートの部屋に入る

「ただいま...」

 そう言ってカバンを乱雑に放り投げて制服を脱ぎ始める

「......また傷が増えたな」

 自分の体を見てそうつぶやく

「...ってもう時間がないじゃん!」

 俺はいそいで服を着替えて家を飛び出す




「ちょっとおそくなったな...」

 そして俺はいつも通り明夜との待ち合わせ場所へと向かっていた

 俺は待ち合わせ場所である今はもう使われていない橋の下に明夜と作った秘密基地に着くと明夜の名前を呼ぶ

「明夜?いるかー?」

 返事は返ってこない

「明夜?」

 俺は名前を呼びながら中へと入っていく

 それにしても先ほどから変なにおいがする

 そう、それはまるで人が死んだような....

 その瞬間、俺は見てしまった

「明...夜...?」

 目は虚ろで四肢は曲がってはいけない方向に曲がってしまっていた

 俺はあまりの驚きに腰が抜け、四つん這いの状態になりながらも明夜の下へと向かう

 明夜の体に触れる

「冷たい.....」

 情報が追い付かない

「明夜ッ!起きろよ明夜ッ!!!!!」

 体を揺さぶる

 死んでいることはわかってはいるがどうしても信じたくないがゆえに、死んでいないかもしれないという望みを抱えて...


 そうしていると誰も来ないはずのここから俺と明夜以外の声がする

「おいおいおい、ちょっと離れてた間にここに来ちまってんじゃねえか」

 俺は声がしたほうに顔を向ける

 そこには、血が付いたバットを持った時業がいた

「お前が...やったのか...?」

 確信をもって目の前の時業に問う

 時業はふっと鼻で笑った後俺をあおるかのように言った

「だったらどうする?」

「ぶっ殺してやるッ!」

 俺は目の前の相手に向かって殴りかかる....が時業は軽くバットを俺の腕に当てた

 そしてその瞬間、俺は気が付くと当たった個所に軽く当たったとは思えないほどの痛みを抱えながら後ろに飛ばされた

「がッ!?」

(なんだ...今の一撃、軽く当たっただけなのに....)

 俺は自分の腕を見ると骨は折れてはいないもののかなりの衝撃で腕がうごかせない

「それが...お前の能力か....」俺は時業を睨んで言う

 時業は笑みを浮かべて「そうさ、俺の能力は本塁打ホームラン。バットで当てたものに対して当てたときの強さ関係なく本塁打級の威力を与える能力だ!」

時業はバットをブンブンと振り下ろし

「そんじゃ、お前もぶっ殺してやるよ」と言って俺に向かってくる

(どうする....逃げるか!?)そう考えたが明夜の死体が視界に入りそんな選択肢は消えた

そして俺は覚悟を決めて時業に向かう

時業はバットを俺に向かって振り下ろすがなんとかよける

「っぶね!」

しかしよけたせいで体勢を崩し次の時業の攻撃が頭に直撃した

「チク....ショウ.....」

そしてその衝撃により俺の意識は遠退いていくのだった




「ッは!?」

俺は飛び起きた

そして周りを見渡すとそこは...

「なんだ....ここ?」

一切の影がなく気味が悪いほどの白い場所に俺はいた

「俺は...あいつに気絶させられてたはずじゃ.....」そうつぶやいた瞬間、後ろから声がした

「無様だな」

俺は驚き、ふりかえると俺と全く同じ姿の人物が俺をあざ笑うかのように見ていた

「お前は.....」

「聞きたいか?」

目の前のそいつは少し考えるようなそぶりをした後

「とりあえず言えることはお前は俺だ」とだけ言う

「どういう意味だ?」そう聞くと

「さあな」とそいつははぐらかすようにそういい

「明夜の仇を討ちたいか?」と聞いてくる

もちろん俺は「ああ」と返すとそいつは俺の胸に手を置き、「契約だ。俺の能力を貸してやるよ」と言う

その瞬間俺の心臓に何か熱いものが流れ込んでくるような感覚に陥る

「ぐっ...うぅ....」俺は倒れこみ心臓に手を当てる

体が焼けるような感覚に陥り俺の意識はまた遠退いていくのだった




「うぅ....」目を開けると元の場所に戻ってきていた

俺はすぐに立ち上がると時業は驚いたような声を上げる

「お前、死んだはずじゃ....まあいい、もう一度殺せばいいだけだ!」

時業は俺に向かってバットを振り下ろす....がバットは俺にあたる直前で止まる

「ッ!?」時業は何かおかしいことに気づいたのか距離をとる

「お前...能力者じゃ...」


今の俺は体中に力があふれていた

今ならこいつを....殺せるそんな気持ちさえしている

「かかって来いッ!ぶっ殺してやるよ!」

「この野郎ッ!もう手加減しねえぞ!」時業は両手でバットを持ち、バットを俺に向かって振りかぶる

「死ねぇぇぇぇ!」



勝負はついた

時業は死んだ

明夜とおなじように四肢を無理やり捻じ曲げた状態で


「勝った......」

「仇をとったんだ....!」

そういった瞬間あまりの疲れかはたまた能力を使いすぎたのか俺は倒れこみ意識を手放すのだった

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無能力者と呼ばれた者の逆転劇 ルイ @ruisyousetu

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