ようこそお越しの!

有衣見千華

第0話 神戯樹

国の中心には一本の細い木がなっている。

否、木と呼ぶには時期尚早らしい。


もう何百年もそこに居座っているのに、全くと言っても差し支えないほど成長しない木、否、枝。


現代人らはこのような害悪植物、すぐに刈ってしまおうとチェーンソーを取り出したが、老人らはそれを拒む。

神聖な何かと訴えるがそれが若年層に共有されることはなかった。




宗教を信仰する老人らは、この細い枝のことを神戯樹しんぎじゅと呼ぶ。

国には複数の宗教が伝わっているが、国民の大半が信仰するのは「ルーダー教」だ。


宗教を断つ明確な理由は無意味に神戯樹を邪魔者とする若者にも考えつかなかったようで、平和と宗教、そして知恵が混同する今の「シーンツァ」ができあがっている。





神戯樹の生きる街は星樂街せいらくがいと呼ばれる。

漢字には諸説があり、正落とも、聖烙とも表される。

シーンツァの中央都市であり、同時に知恵の街、宗教都市を兼ねている。


その神戯樹の直ぐ側に建てられ、同時にその管理も担う施設がある。

子供からは図書館と簡易な呼び名をされるが、これは大きな間違いである。



地上8階立て、国最大の巨大図書館、それに詐称はない。

問題はこの下層及び上層。


一般市民立ち入り禁止区域である図書館地下一階。

その更に下層。


“彼ら”の勤務地に、その姿はあった。


木造の机に誤って落ちたキセルの灰に、燃え広がるより先に、指先から湧き出た水が落とされる。

中身がカラになったキセルで額をコンコンと突きながら、女性はため息を吐き出した。


「今日の事件も厄介そうだな・・・」



――――――――――


初めましてあるいはお久しぶりです。

かなり丁寧に作りました。

是非お楽しみください。

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