第25話

その声とともに、

テーブルに置かれたビールジョッキ。




「ーーコウさん!」



私は目を見開いた。


にっこりと綺麗に微笑む、営業スマイルのコウさんが立っていた。


ーーコウさん自ら持ってきてくれるなんて




「さっそく今週も来てくれたんだね。さっきまで奥に引っ込んでたから、知らなかったよ。

リョウが教えてくれたんだ」



亮平君に目を向けると、ちょうどこちらを見ていて右手を軽く上げてくれた。







ーーー腕時計を取りに来たあの日。


すぐに要は戻ってくるから、謝りたいなら直接話せば良いのにと言ったコウさんだったけど、これ以上関わるのは返って迷惑になる気がしたから、なんとか伝えてもらうようにお願いし、このBarを後にしたのだった。




「先日は色々と、ありがとうございました。

・・・あの、要さんは大丈夫でしたか?」



機嫌は直してくれただろうか。



「あれくらいじゃ、怒らないよ。っていうか、あの顔だからそう見えるだけで、誤解されやすいだけなんだよ。でも一応は伝えたよ」



「ーーーありがとうございます」



顔が綺麗すぎて無表情って、確かに怒ってるように見られやすいかも。





「・・・こちらは?」


コウさんがサダにチラリと目を向けた。



「大学の頃からの友人のサダです。先週一緒に来た子とも仲が良くて。サダ、こちらはここの店長のコウさん」



「初めまして。衣都の友人の定春です」



ペコっと頭を下げるサダ。



「本日はご来店頂き、ありがとうございます。

店長のコウと申します。ーーかっこいい男性と一緒だって聞いたから、衣都ちゃんの彼氏かと思いましたよ」




ーーー彼、いないって知ってるじゃん!



軽くコウさんを睨む。



「ーーいえ、唯の友人です・・・それなりに仲は良いですけど。


ーーー衣都には昔フラれてますから」





「ーーーーっ!」



余計なこと言わないでよ!



一瞬、口角を上げたようにも見えたコウさんだったけど、気のせいだろうか・・・?



「それは余計なことを聞いてしまって、すみません。ごゆっくりどうぞ」



衣都ちゃん待たねっとコウさんスマイルで、

カウンターの方へと戻っていった。





・・・からかわれた?

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