第19話

切れ長の目に真っ黒な瞳、高く通った鼻筋、

薄い唇、無造作に流れた黒髪。



そこには

恐ろしく容姿の整った男が立っていたーーー







冷たい瞳に見下ろされて、

ゾクっと背筋が凍る。






「・・・あのっ、私・・・」




慌ててガタッと椅子から下りながらも、自分が微かに震えていることに気付き、この状況を上手く説明が出来ない。




真っ黒なオーラを放つ、威圧的な存在に圧倒されていると、またその口が開いた。







「ーーーコウは?」





顔の表情をまったく変えない男。




「あの・・・えっと奥に・・・っ」









「お待たせ〜!」



カウンターの奥に目を向けると同時に、

両腕にお皿を抱えたコウさんが出てきた。








助かったーーーー!!!







コウさんの姿を見た瞬間、息をするのも忘れていたほどの緊張感からようやく解放された。






「あれ?要、起きてたんだ?」



「今起きたんだよ、3時間経ったら起こせって言ったろ。過ぎてんじゃねーか」



チッと舌打ちをする。




「メシ作ったら起こそうと思ってたんだよ。

ちょうど今出来たから!


さっ!衣都ちゃんも食べよっか」








待て待て待て!


え?え?





コウさんはカウンターに近い広めのテーブル席に、ピラフとサラダを3人分テキパキと並べていく。




このブラックなオーラを纏ったヒトも、一緒に食べるの?どう考えても仲良く食べられる雰囲気じゃなくない?この状況からして、お邪魔なのは私ですよね?



だってさっきの会話から察するに、コウさんはこのヒトの為にご飯を作ってたんだよね?


このヒトからしてみても、『誰だよ、おまえ』って感じですよね?そんな得体の知れない女と一緒に、寝起きでご飯って嫌じゃないですか?




「はい、衣都ちゃんはここね」




私が頭の中でゴチャゴチャと考えている隙に、

すでにコウさんもブラックオーラのヒトも席についていた。








ーーーっていうか、もう食べてるし!

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