第71話

「谷口〜どうした…あっ‼︎」


男は乙葉を見ると、ニヤリと笑う。


「あれあれ〜?

気持ち悪い絵を描いていた、絵咲乙葉じゃん!なに、なに、久しぶりじゃーん!」


「おい、和留…」


「いやいや、だって、こいつ、中学生の頃、谷口の絵を描いてたじゃんか!

今でも、愛しの谷口を描いてんのかよ〜?」


ヒューヒューっと、悪戯に揶揄う様な仕草をする。


「ちが…描いてなんか…」


トラウマが一気に蘇り、カタカタと震え出す。


『あんた達なんか、描く価値もないって言わないと!』


でも、口は震えて、言葉が出てこない。



「谷口、困ったよなー。

あの頃はお前モテすぎて、ラブレターならまだしも、まさか、絵まで描かれるなんて思いも寄らなかったよな!」


アハハハーっと愉快そうに和留が爆笑した。


「あー、もう、和留のせいで思い出したじゃないか!

ラブレターは嬉しいけど、絵は怖いよな…ストーカーみたいだし…。」


ハハッと谷口は乙葉を見ながら、馬鹿にした様に笑う。


「モテるサッカー部キャプテンは辛いよなぁ!」


「ちょっと、遊んであげてもよかったけど、流石に、ストーカーまがいのことをする人とは…近づきたくないな。」


和留と谷口は好き放題言う。


乙葉は泣きそうになる。

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