貴方が弾いていたから

あいこ

第1話

あの時、お前は泣いていた


それが、空に旅立ったあの子の泣き顔に似ていたから、俺は目を奪われた…


いつも週の真ん中で、1人ピアノを弾くのが習慣になっていた


誰も居ない音楽室で思いっきり弾く


いつも弾く曲はだいたい決まっていた。


そんな事を続けていたら、いつの間にか1人の観客が俺の演奏を聴いていた。


音楽室のドアを少し開けて、こっそり隙間から覗いている。


本人はバレていないと思っているらしいが、思いっきりバレている。


変なやつ。

関わりたくないから、気づかないふりをして無視していた。



それでいいと思った・・・



いつもと変わらない日々。


だけど、今日は違った。


今日はあの子の特別な日


その為に捧げる曲を弾いていた。


またいる…


人の断りもなく聴いていた。


今日こそは文句を言うつもりで、何気なく、お前の顔を見てしまったんだ


綺麗な目から涙が零れ落ち

一瞬で目を奪われた


泣いていたお前の泣き顔があの子と重なり、頭から離れない

俺の頭の中がぐちゃぐちゃになった。

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