第10話

「お父様…今のお言葉、冗談ですよね?」



ズレた眼鏡をハハっと笑いながら、元の位置に直す。


「冗談ではない。

結夏さんも了解した。

そうだね、結夏さん。」


「はい、宝来様。」



無駄に愛想のいい笑顔で結夏は微笑む。


お父様は結夏の笑みに照れたように笑う。



お父様の鼻の下が伸びているだと!!?


くっそ、お父様にご機嫌取りをしているつもりか!


あの女、油断ならない!


側に置くなんて出来るか!



「ちょっと、待っていただけますか!?

お父様、お言葉ですが、私はもう、高校3年生です。

世話役など必要ありません!」


はっきりとした口調で言う。


「もう、話は済んだんだ。

では、私は忙しいから、もう行く。」


キリッと顔を渋くし、いつもの状態に戻る。


そして、胸を張り、威厳を放ちながらその場を去った。




あの、エロ親父め…



我が父ながら、あんな女の笑みにやられるとは、情けない…


だが、俺はそうはいかない!




お父様が去って、部屋には緊張感が漂う。

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