第30話

「ビックリした?」


「ビックリも何も…キっ…。」


ケントの顔を見ると、当の本人は何事も無かったかのように飄々としている。



なんで、そんなに涼しい顔をしてるの⁉︎ドキドキしてる私が馬鹿みたい!

また、健太にからかわれたのかな…


ななみはため息をつく。


「ななみちゃん、大丈夫?」


ケントはななみの顔を覗きこんでくる。


「はぁ…あの女の人、健太を探してたみたいだけど、行かなくてよかったの?」



「…ななみちゃん、今の俺はケントだよ?」


「⁉︎

分かった…ケントが行かないと、困るんじゃない?」


「…アフターする予定だったんだけど、俺の家に来たいってしつこいから、逃げてきたんだ。」


「えっ⁉︎」


ドクっと心臓が高鳴る。



ケントの言葉にななみはビックリして、ケントの服を無意識に掴む。


「ななみ…ちゃん…?」


「そっ…そうなんだ…。

でも、No.1なんでしょ…お客さんに答えなくて良いの?

私にしたみたいに…」


涼の言葉がぐるぐる回る


そいつ、手慣れてる


色恋営業じゃん!


軽く言われた…


そう、ケントは色恋営業をしているのかもしれない…


ホストクラブに勤めてるんだから、そんな事、あたりまえじゃない


でも、胸がザワザワして、痛くなる


嫌だ…


私以外にそんなことしないでほしい


服を掴む力が強くなる。



「ー…。」


ケントは黙ってななみを見つめる。

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