第57話

「…嘘下手すぎ」


「え?嘘じゃ…」


ぐいっと光に引き寄せられる


「ひかるっ!?」


びっくりした声を上げた瞬間


唇に何かが触れた


「…っ!」


光にキスをされた


呆然と光を見る


「光…どういうつもりですか?」


「あんたの悲しそうな顔見てたら、キスしたくなった」


「………。」


「俺には何でも言って…

えりの力になりたいんだ。」


光の思いも寄らない言葉に、えりは困惑する


「なんで、私にそんな事を言うの?」


「…あんたが気になるから。」


猫目の瞳がまっすぐ見てくる


純粋な思いをブツケられているようだった


「私は真広さんの愛人ですよ?」


「知ってる。

でも、辛いんでしょ…?」


「え…」


「千佳さんと比べちゃう?」


「………。」


「真広さんが千佳さんに会いに行くから悲しい表情をしてんじゃないの…?」


光るの言う通り、全て図星だった…


「…そうですよ。

私は真広さんの愛人で、何時でも2番手。

境界線は越えてはいけないのになんでかなー…」


えりの目から涙が溢れる


「辛いんだ…

あの人の1番は千佳さん。

分かっているつもりだけど、心が追いつかないんだよなー…」


「えりさん…」


「なぜか、真広さんが千佳さんの名を呼ぶたびに心が痛むんです。

でも、こんな事、絶対口が裂けても言えない。」


「えりさん!」


光にぎゅっと抱きしめられた


「俺が、えりさんの心の隙間、埋めてあげます」


「光…?」


「だから、真広さんが居ない時は俺がえりさんのそばに居ちゃダメですか?」


耳元で囁かれた。

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