第2話

高校1年生の夏ー



担任の先生から英語のテストを返された私はそれを大事に抱えて帰宅を急いだ。


夏休み早々、担任からの説教と反省文と補習とがのしかかった。


苦手な教科だから、テスト中眠たくなって寝たら、担任を怒らせてしまい、その後も、何回かお情けのテストを特別に受けさせてもらったのに…ことごとく駄目だった。




ヒューっ!


夏の突風が一陣吹いた。


「あっ!?」


風にさらされ、私からテスト用紙が離れていく。


急いで追いかけたけれど、テスト用紙は遊ぶようにふわふわと飛んでいく。


「まってょ!」


テスト用紙は遊ぶのをやめたのか、ゆっくりと地面へと落ちていった。


視線はテスト用紙に注目していたので、人が居るのに気付かなかった。



その人はテスト用紙を拾い上げる。


「日菜乃沙奈」


低音ヴォイスで名前を呼ばれた。


「ぁっ!?うそ…」



目の前には学年1モテる男と噂の、倉元スカイが立っていた。



『よっ、よりにもよって、倉元君に見られるなんて人生の恥だよー!』


いろんな感情が入り混じり、まともに目も合わせられないでいる。



「0…点」


声色から察するに、テスト用紙を見て少し引いているようだった。


「かっ、返してくださいっ!」



絞るように言った。



「日菜乃さん」


「はっ…ぃ」


名前を呼ばれたので、恐る恐る目を合わせる。


「⁈」


ビクビクしている私とは正反対で彼はキラキラと輝く笑顔だった。


なんて、綺麗に笑うんだろう…

ずっと見ていたい…


目を奪われてしまう。


これが、学年1モテると噂の男の力。


「もし、良かったら俺が英語を教えようか?」


「え?」


「夏休み、暇していたんだ。

ちょうどいい暇つぶしになるかなって思って。」


「そっ、そんな…

いいです!」


倉元君に教えてもらうなんて…

恐れ多い!



「遠慮しないで。

これは、ボランティアみたいなものだから」


「そ、それに、倉元君の事、良く知らないから申し訳ないです…。」


「そっか…

ならさ、今日から友達になろうよ」


「友達⁇」


「それなら俺のことを知らないなんてないよね?」


無邪気な笑みを見せる顔はあの人に似ていた。


「ぁ、あっ?ット⁉︎」


そ、その笑み…


リキトに似てるー!!



思わず声を出しそうになるのを堪える。



倉元君は不思議そうに私の顔を見た。


私の推し…

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