Vol.2/デッド・ソウルズ(9)

 男は答えなかった。


 直感した。


 こいつが《兄貴》だ。


「何故、オレを殺そうとするんだ?」


「それより、こっちの質問に答えてくれ。何故、お前は死なないんだ?」


「!?」


 逆に質問されて、言葉に詰まってしまった。オレだってわからないのだ。それこそ、こっちが訊きたい。


「いやぁ……実はオレもそれで今、悩んでて。まさに、悩みは青春の特権だね」


「……すっとぼけた野郎だな。困るんだよ、それじゃ。おとなしく死んでくれないと。クライアントに顔向けできない」


「!? 何だよ、クライアントって!?」


「ノーコメントだ。守秘義務ってもんがあるからな。…とりあえず、こっちはもう手を引かせてもらう。金も惜しいが返す。うちの舎弟どもをこう何人も病院送りにされちゃ、割りにあわんからな」


 短髪をうながし、立ち去ろうとした。


「待てよ! 力ずくでいわせることだってできるんだぜ!」


 精一杯、凄みをきかせてみた。


「やめとけ。兄ちゃんには無理だよ」


 確かにそのしぶとい面構えを見れば、短髪のようにはいかなさそうだった。


「ところで、兄ちゃん。バンドってやつは……仲が悪くても、やっていけるもんなのかい?」


 唐突に、男が問うてきた。質問の意図がいまいちよくわからなかったが、訊かれたので一応、答えてやった。


「場合に――よりけりだな。本当に仲が悪いとダメだろうけど、お互いにライバル心が刺激されるようなのだったら、いい方向に転がってくこともあるし。でも、何でそんなこと訊くんだ?」


「……ま、いいお仲間を持ったもんだな」


 そういうと、男は短髪を引きつれ、今度こそ去っていった。


 だが、オレは追いかけようとはしなかった。


 男の発した言葉の意味に、気を取られていたからだった。

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