Vol.2/デッド・ソウルズ(5)

 雨で全身、びしょ濡れだった。足も裸足で泥だらけだったが、贅沢をいってはいられない。


 チンピラたちが襲いかかってきた!


 慌てず騒がず、眉間やみぞおちなどの急所を狙い、ひとりひとり倒していく。


 誤解がないようにいっておくが、オレは特別、格闘技に長けているわけではない。知識もないし、喧嘩も弱いほうだ。


 ただ、恐怖心がないだけだった。


 かつてのオレは怪我などを恐れ、怖がっていた。それゆえ、心と身体が萎縮して、暴力的な場面になるといつもすくんで何もできずにいた。


 でも、今は死んでいた。怪我の心配もなかった。


 恐れる理由がもうないのだ。


 理由がなければ当然、萎縮もしない。萎縮しなければ余裕が生まれ、余裕が生まれれば、攻撃も冷静かつ的確に繰りだせるというわけだ。

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