ファントム・オブ・ロック/DEAD SOULS

緒方えいと

Vol.1/心臓にナイフ(1)

 驚いてしまった。


 目覚めるとススキに覆い被さられるように仰向けに寝転がっており、左胸にはサバイバルナイフが突き刺さっていたからだ。しかも両手で柄の部分を、しっかり握りしめている。まるで、自ら手を下したみたいにだ。


 冗談じゃない。


 このオレが自殺するはずないし、そんな理由もない。


 それよりも、何で生きているのかが、まず疑問だった。心臓にナイフが刺さっていたら、普通、死んでいるのが当たりまえだろう。


 にもかかわらず、ピンピンしている。


 作家の豊田有恒に倣うなら、言語道断横断歩道ってヤツだ。


 試しに左手首に指をあて、脈をさぐってみた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る