透明は空の色
高代 柊花
矛盾
「こちらのレジどうぞー」
いつからだろう。
「いらっしゃいませ、ありがとうございます」
初めからだと思えば、少しは楽になるだろうか。
「ブックカバーご利用になられますか?」
「え~、っと」
僕は、人が怖い。
「こちらにしますか?」
「あ、そっちはお願いします」
「はい、文庫本全部ですね」
きっと、そこに自分も含まれている。
「お品物4点でお会計が、3817円になります。当店のポイントカー
「〇Peyで、あ…」
(また、やってしまった)
「かしこまりました~。ではこちらのQRからお願いいたします」
(あ、以外にでないもんかね。首振ってないでさ)
「お待たせしました。お品物です」
(ありがとうございました)
「ありがとうございました~」
(はぁ)
対話はおろか、会話もできない自分のふがいなさに腹が立つ。
僕は人が好きだ。一人として同じ人はいないし、繋がればとてつもない力を得る。笑い、泣き、喜び、怒る。考えて行動し、感じて感動する。こんなに面白い生き物が他にいるだろうか。でも、地球に約80億人存在するそんな生き物たちが僕は怖い。
それはきっと、人生において最もあおく、かつ、最もやわらかい時間に努力を怠ったためであった。さらにはその事実こそが、やわらかいまま固まってしまった僕の心に鍵をかけてしまっているのだった。
そして何より、そんな矛盾を抱えて平然と生きられるほど、僕という人間は強くなかったのである。
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