第18話

あまりしつこく言ってウザがれるのも嫌だから、気のないふりして実験の詳細についての探求心を強制終了させた。




「あ!」


今度はなに?と思ったらリュックをガサゴソさせて何かを取り出していた。


「これ。好きだったよね?」


「うん…なに?もらっていいの?」


「うん、いっつも世話になってるし」


「別に、いいのに」



なんて思いながらも”知ってたけどね”と心で呟く。



”唯一の友達”


彼女に私って存在を紹介したようなこと言ってたよね?


わたしだったら、そばにいてもいいよ的な許しをもらっていたとも聞いたことある。



わかっているけど、やっぱりこいつの中で私は”友達”止まりなんだと自覚する。



こんだけ一緒に居たら、少しだけでもよく思ってくれてるんじゃないかって、友達以上の関係になることも、もしかしたらって・・・。



そんな気持ちが全くなかったらと言ったら嘘になる。



わたしの脳内はやっぱりお花畑かも知れない。




「ありがと」


「ううん、たまたま見かけてさ、思い出したの」



たまたま?———には見えなかったけど・・・。


それを手に取ってすぐ会計済ませて出ていったじゃない。


これが目的であの店に入って来たとしか思えないけど、あの場所に居合わせていただなんて言えない私は、その間違えを正すことができない。



それからお正月っぽい深夜番組を一緒にみて、お菓子やジュースでまったりとしていた。



気持ちのモヤモヤよりも、こうやって過ごす平和な時間は何事にも代えがたい。



疑問をスッキリさせて、終わってしまう関係になるのはまっぴらだった。

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