第15話

新年があけてやってきた冴島はいつもの調子で、今年もよろしくとかママに言いながら当たり前のように入ってくる。



「やっほー、あ、ゲームしてるし」


「・・・いらっしゃい」



わたしの部屋のドアを開けた冴島は、無邪気に笑いながらカバンを下して、小さな机を自分で出していつものように買ってきたお菓子やジュースを並べる。



「一緒に食うか。あ、ゲーム俺もやりたい」


「ん、ちょっと待って。」



ママがいる時なら遊びに来ていいよと許可してしまった過去の自分を呪いたい。



”今から行く”とメッセージが入り


ワンテンポ遅れながらも”いいよー”と返してしまう私。



年末の出来事は心の中をモヤモヤさせつつも、やっぱり断ることなんて出来やしない。


誰かのものだって分かってる。


自分の恋が報われないことも。



でも、こんなに近くで楽しそうに笑ってくれる笑顔が見たいから。


だから、私は永遠に”あんたなんて眼中にない”とばかりに、0.01%っていう絶望的に可能性がない状態であることを証明し続ける。




彼女に向けていた表情とは違うけど、それでも、こんなにリラックスしてる姿だって、わたしだけの特権のように思えていた。

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