第2話

「あはは、やべーな」

「……………はい?」

「だから、やべーし、キモいって」


キモいって言った?


私の理想を教えてみろって言うからさ、説明してんじゃん。


それなのにこいつ、練乳たっぷりのフランスパンを優雅に、そして無駄にカッコイイ顔しながら咀嚼した後に”キモい”って言いましたよね?



「わたしはそのキモいくらいベタな仲良し青春高校生活を送りたかったの!」


実際、去年まではちょっと大げさだけど、そんなような雰囲気もあったんだ。



「うっは、そのうち好きな人を巡って仲間内で覇権争いがおきて無視したりされたりすんだぞ。そうならないほうが平和じゃん」


「あんたじゃないんだから、上手くやるもん」


「計算高い女」


「べっつにそんなことないよ、人として付き合い方を学んでいくんでしょうが高校ココは!」


「脳内お花畑だな・・・。どう考えたって自分より出来ない奴探して、"自分はあいつよりマシだから―――"っとかって安心するために目を肥やすところじゃん」


思考がひん曲がってんな。


健全な男子高校生には程遠い。



「まあ、お前は俺と居る羽目になって、みんな離れていくんだから諦めろ」


「疫病神・・」


「はいはい、今日はこれで許せ」


イチゴパックジュース貰ってもさ、甘ったるくて好きじゃないんだけども!


―――って思いながらもストローさしてチューチューするけどさ。



これで許された気にならないでよっていう睨みはわすれない。


でも、いつものようにこいつはどこ吹く風。


ふたつ目も同じパンで、それをぎゅ~っと握って「ぱふ!」って破裂させていた。




腹が立つけど「ああ、”パンっ”て言わせたかったのに、惜しい」とか呟くから、その一言で意味のないことはやめようって諦めがついた。

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