第33話
彼の運転する車が砂利を踏み鳴らして、そのまま道路へ出て行くのがみえた
『本当に、置いてくんだ・・・』
ーカチーカチーカチーカチー…
さっきまで聞こえなかった、時計の秒針。
誰も居ないせいかやけに響く。
『寂し――…』
心の呟きに負けしまわないように、食べかけの朝ごはんを食べ始めた。
おもむろに白いご飯を口いっぱいにいれる。
そうしたら、口の中にご飯の甘みが広がって、その温かくて優しい味に涙が出てきた。
もう!たっかのばかやろう!
そう心で悪態をつきながら、口の中に詰まっているご飯を
流した涙が口の中に入って、ご飯が少ししょっぱくなってきた。
「はあ、もう、手ごわいな」
中々届かない気持ちを、今日はご飯とお味噌汁に溶かして、美味しくいただいた
そうすれば、悲しい気持ちも優しい味にかわる
「お味噌汁、おかわりしよう」
一人暮らしには多すぎるその量をみて、また涙がこぼれてくる
私が小さなころから好きなこれを、いっぱい飲めるように作ってくれたんだ
たっかは優しい
けどそれは愛情じゃない
彼の中で、いつまで経っても私は
『近所の女の子』なんだ、きっと
悲しい気持ちを溶かすにはもっとお味噌汁が必要だ
だから、全部飲んでお鍋を空にした
帰って来たらビックリするだろうか?
そうして、すこし笑ってくれたら嬉しいな
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