第80話
「お、お義母さん・・・」
「蓮人はあなたの子供ではなくなってしまったけど、いつか知られる時はくるわ。そんな時、あなたが今のようなボロボロな姿だったら蓮人が悲しむでしょ?いつ会いにきてくれても恥ずかしくないようにしっかりと生きなさい!生活を整えて仕事もちゃんとしたところに働けるように努力しなさいよ!男に頼ってもその環境から脱失することは出来ないわ。自分を救えるのは自分しかいないの、分かるわね?」
由香里は母の言葉に無言で頷いていた。
よほど堪えたのだろう。由香里は静かに泣くだけで何も話さなくなった。
「――――今回は・・・いいかな?」
「――――うん、いいよ。彼女の涙を信じてあげよう」
「由香里さん。―――本来ならば、接見禁止の条約に基づき、それを違反したとして罰則金を請求するけど、今回については不問とするよ。だけど、忘れないでね、次はないよ?」
「――――――はい…」
由香里はそう返事をすると静かに立ち上がり、母親や俺らに目を合わすことなく深くお辞儀をして振り返ることなく帰って行った。
「―――――乙葉ちゃん、びっくりしたでしょ?大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。それより、お義母さん?凄く恰好よかったです。改めて惚れ直しました」
「ううん、そんな立派なこと言われる筋合いはないんだよ。散々いろんな男に頼ろうとしては騙されて、浩紀を苦しませてきたんだから」
「――――――まあ、そうだよね。同意」
「ちょっと!ヒロ君!」
「だから、罪はまだ帳消しになってないからね?ちゃんと償ってよ?また下手くそな料理作りに来たり、この子が生まれたら子守りに来たりしてくれな?刑期はまだまだ明けないから覚悟していてね」
「あっはっは、そうかい。じゃあ静かに刑に服すことにしようかね」
俺たちの会話を聞いて乙葉は安心したように微笑んでいた。
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