第68話
溜め息をついてソファに座り直す。
リビングの隅に飾ってあるブライダルフォトをぼーっと眺めていた。
結婚―――――もうしてんだけど?
しかもだいぶ前に。
「・・・・・・・・・」
「どうしたの?ヒロ君。久々に固まってるね」
「うん。ちょとね」
「大丈夫?――――メール?どんな内容だったの?」
「乙葉に聞かせるにはしょうもなさすぎるから、聞かない方がいい。お腹の子に障ったらいけないし」
「そうか、じゃあ聞かない!胎教に悪そうだしね」
乙葉は由香里からメールがきたことを悟ったのだろう。
それにしても・・・・この文面。
お前が言うなって感じだな。
”その店には行けません。結婚のことはご心配されなくても大丈夫です”
簡単な文章を返信をして、妻との夕食を楽しんだ。
「んげ~…。俺が嫌いなほうれん草…」
「美味しいから食べて?下処理もしたし臭み無いはずよ?」
「本当?―――」
一口、騙されたと思って口に運ぶ。
「あ・・大丈夫かも・・・ってか、うまい」
「ほぉら~食べれたじゃん!」
俺は基本的に青物が苦手だった。
だから自らが率先して料理を作っていたんだ。
苦手なものと、どうしても食べられないものがあったせいもあるけど。
乙葉の料理は基本がしっかりとしているせいか苦手なものでも食べられることが多かった。
俺が食べられないものがある事をきちんと把握してくれる乙葉は、俺の健康を気遣って食べられるように工夫してくれるんだ。
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