第65話

「ごめん、疲れたでしょう?」


「ううん、楽しかったよ。子供は好きなんだ」


「そう言ってくれてありがとう」


「もし俺たちにも子供が出来たらさ、あの輪の中にいるんだろうなって思ったら、なんか気持ちがほっこりした」


「もうそんなことまで考えてるんだね?」


「そりゃあ考えるさ」


「そうかぁ、じゃあ早めに産まないとね」


「え、産んでくれるの?」


「何びっくりしてるの?そんなに驚くこと?」


「だって、乙葉は仕事大好き人間だから嫌がれるかなって少し思ってた」


「あー、過去の私だったらそう思うだろうけど・・・、今は違うかな?ヒロ君と私の子は凄く欲しい!」


「本当?」


「うん、本当。仕事は育休もあるし、復帰したらシッター雇ったり、保育園に通わせたり、両親にお願いしたりとかさ。いろいろやりようがあるでしょ?私たちの子は私が産むしか方法が無いから、替えがきく仕事なんてどうでもいいし。そうだなあ~…10歳くらいまでは子供中心にしていきたい。わー、考えたらなんかワクワクしてきた!親の視点で見る世界ってどういう景色なんだろう?今までより桁違いな困難が起こるんだろうな~。それらに立ち向かっていくの大変だろうけど、桁違いな景色が見れるのなら頑張っていきたい」



子供や家族に対して夢見がちな考え方ではあるけれど、俺は好感が持てた。


子育ては、もうちょっと閉鎖的な環境になると勝手に勘違いしていたけど、彼女には当てはまらないみたいだ。



「子供がいるから出来ないことが多い」と言っていた元嫁に対し、「子供がいるからこそ切り開くべき道がある」という乙葉はまるで正反対のタイプに思える。

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