第23話 瑞穂王国留学生 美幸《ミユキ》バーランダー公爵家第1公女

 王国立ドーム学園事務局


 撫子ナデシコ・バーランダー公爵夫人とその娘、美幸ミユキ・バーランダー公爵家第1公女が来年4月の高等部入学面談で学園を訪れていた。


「お母様。留学生枠だと中等部でも特別Sクラス編入試験が受けられるのよね。」


「そうよ美幸ミユキ。でも今年の編入試験はもう終わってるわよ。」


「事務局の説明だと中等部の3年生に特別Sクラスが4人もいるって。」


「そうね。辰徳タツノリ国王様の5人黄金世代に後1人って凄いわよね。」


「その4人と勝負して勝つか引分ければ、私の特別Sクラス編入を認めてくれないかな。」


「ええ、そんな前例は無いわね。でも中等部って残り5ヶ月よ。来年2月の高等部受験で、特別Sクラス規定クリアすれば良いでしょ。」


「お母様お願い。国王様の妹、カエデ元第2王女様と親友なんでしょ。今はこの国一番の武力"抑止力侯爵"の第1婦人。何とか勝負させてくれないかしら。」


「まったく貴女ったら…とんでもない事を思い付くのね。」


「別に特別Sクラスは高等部からでも良いの。私と同じ年齢で特Sの4人と勝負がしたいだけなの。」


「本音が出たわねミユキ。特Sの件は来年からで良いなら、模擬戦だけでも可能か?聞いてみようかしら。」


「ほんと!お母様大好き」


「でもカエデはヨミウリ侯爵領にいるから直ぐには会えないわね。御姉様のセリーグ第1王妃・サクラ様なら王都に居るし、私も可愛がってもらってたの。今から大使館経由で謁見申し込みを出してみる?」


「やったーーーお母さん!!」


「こらちょっと!この娘ったら、子供みたいに抱きついてw」


「だって子供だもん」


「はいはい、分かったから。でも相手は王妃様よ、先触れ出しても公務で多忙を極めてるわ。今日は連絡だけしてもらって、明後日以降の日程確認からの話しになるけど良いわね。」


「はい分かりました。お母様宜しくお願いします。」


 セリーグ王国と瑞穂王国。

 王族同士の婚姻も含め、民間人の交流も広く深く行われており、200年以上に渡り固い同盟を結ぶ一枚岩の関係。


 撫子ナデシコ美幸ミユキ母娘2人は瑞穂王国大使館に戻り、正式な謁見申し込みを行った。


 **********


 翌朝10時


サクラ・セリーグ王妃様この度はとつ……」


「ナデシコちゃ~ん♡ミユキちゃ~ん♡」


 がしっ


「「えっ!」」


 ナデシコ・ミユキ母娘2人をまとめて抱きしめる桜王妃様。


「「ぐっ苦しいーーおうひさまー」」


「はっ、ごめんなさい。嬉しすぎてつい。」


 ナデシコ

「はあはあ、相変わらずのパワーですね(汗)」


 ミユキ

「はあはあ、初めまして王妃様、はあはあナデシコの娘ミユキと申します。」

 心の声『なにこの人。こんな華奢な体で柔術レベル8の私が、危うく締め落とされるとこだったわ』


「もう堅苦しい挨拶はいいから、ほら2人とも早く座って。まずはお茶しましょ、ねっナデシコちゃん。」


「はい、5年前の両国懇親会以来ですねサクラ王妃様。」


「もうそんなになるのね。瑞穂の方達と会うのは本当に嬉しいわ。大使館員の手紙で内容は把握しています。昨夜のうちに国王様を脅迫違う…お願いして模擬戦の件、苦渋の決…違う快諾して頂いたのよ。」


「「………」」


「王妃様、そろそろお時間です。」

 王妃付きのメイド長が促すが


「待たせておきなさい。」

 部屋全体が一気に凍りつくような、冷たいトーンで言い放つ。


「か、畏まりました。」

 冷や汗をかきながら退出するメイド長。


「あの王妃様、私達であれば出直す事もできま…」


「な~に言ってるのナデシコちゃん。うるさい団体のオジサン達は待つのも仕事よ、ごねるなら寄付金打ち切るわ。ねえミユキちゃん。」


「は、はあ………」


「それでこの件は私に一任むりやりされたのよ。1週間後の11時、場所はドーム学園演習場を昨夜予約むりやりしといたわ。それでどうかしら?」


「何から何までありがとうございます。」


「決まりねミユキちゃんも良いわね。」


「はい(汗)ありがとうございます。」

『王妃様に逆らったらこの国では生きていけないって事だわ……』


「それじゃナデシコちゃん。早速今日からミユキちゃんと2人で王城に泊まるのよ。部屋は個室を2部屋、王妃専用離宮の最奥に用意させましたからね。」


「「離宮って………」」


「近衛第2騎士団30人が瑞穂大使館まで同行するので、荷物等移動してね。それとミユキちゃん、学園には離宮から通いなさい。」


「王妃様、いくらなんでも離宮からってそれは…」


「あらナデシコちゃんおかしな事を言うわね。姉妹同然の貴女の大切な娘なのよ。王妃離宮はこの国で"抑止力侯爵"邸と並ぶ程、警備がしっかりしているの。まさか私の大切な姪っ子のミユキちゃんを瑞穂留学生会館から通わせる気かしら?」


「「…………」」


 小声で囁き合う2人


「お母様…私はいつから王妃様の姪になったのでしょう…」

「ミユキ逆らっては駄目よ…」

「分かってますお母様…」


「分かりました今日から1週間お世話になります。それとミユキの事も宜しくお願い致します。」

「王妃様お気遣いありがとうございます、お世話になります。」


「まあふたりとも良い返事ね。瑞穂出身同士、仲良く暮らしましょうね。」


 そこに真っ青な顔をしたメイド長が再び入室してきた。

「王妃様そろそろ…何とか…お願いできませんでしょうか…」


「あらどうしたの?そんな今にも倒れそうな顔して。人を待たすのは良くないわね、それじゃナデシコちゃんミユキちゃん楽しかったわ。公務があるので、これで失礼するわね。」


「「お忙しいところありがとうございました。」」


 まさに超大型台風が去った後の様な雰囲気が部屋中を覆う。

 まだ午前中にも関わらず疲れきった表情の母娘2人。部屋に残った5人のメイド達もお互いを励ましあうように、部屋の片付けに入る。


 そのとき新たなメイドが入室して

撫子ナデシコ・バーランダー公爵夫人様。近衛第2騎士団隊長以下30名、離宮門前で待機しております。」


「はい、分かりました。案内をお願いします。」


「王妃様は全ての動きが早すぎる方なのですね、お母様…」


「行きましょうミユキ…」


 その日のうちに母娘2人は王妃専用離宮、最奥に2部屋を与えられたが余りの広さと豪華絢爛さに立ち尽くす2人でしたw


 ーーーーーーーーーー


 サダハルオー・セリーグ12世国王(48歳)の第1夫人。

 サクラ・セリーグ王妃(43歳・元瑞穂王国第1王女)


 華奢な体だが強力な雷魔法とスキル無限剛力ムゲンパワーを持つ、最強王妃様。

 タイセーの伯母である。

 

瑞穂王国とセリーグ王国の架け橋として嫁いできたが、まだ10歳のころに出席した両国懇親会で出会った、5歳年上のお兄ちゃんサダハルオーに一目惚れしてしまう。


 その日を境に魔法と武術以外の座学や料理等も積極的に精進。

 3年後再会の場でめでたく婚約が成立し、長年の想いがやっと叶ったのである。


 尚一目惚れの件は今もって誰にも話してはいない。

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