第5話

そうやって能力をフル活用し、知恵を絞り、時に狡猾に、冷酷に、でも必死に自分たちの居場所を築いて行った妖たち。


それに対し、かの時代の人間たちは、妖の存在をほぼ認識していなかったという。




平安——令和よりもさらに千年前の時代では、妖は当たり前のように認識され、史実にも残されているらしい。


だが、人間はそれすらも信用せず、ただの自然現象として扱っていた。


その結果がこれなのだから、人間の浅はかさにはため息しか出ない。




そして、この世の絶対的権利を失った人間たちがどうするかというと、再び自分たちが権利を行使するために、妖たちを排除しようとする。


そこで政府が目をつけたのが、これまで裏の世界で妖たちと戦ってきた術者たちだった。

俗に言う、陰陽師や退魔師たちのことだ。


妖退治を生業とする彼らは、当然、妖が入り混じるこの世界を許すはずがない。


表では上手に妖たちと渡り合い、裏では毎日の如く血みどろな争いを展開している。




妖を倒すことに力を注ぎ、それを天命とする術者たち。


月瀬つきせ家も、そんな術者たちの一門だった。


先祖の誰かが、いつかの時代の有名な妖を倒したことがあるらしく、業界の中ではそれなりに名の知れた家だ。


しかし、そんな名門月瀬家の内情は、かなりドロドロとしていた。

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