第25話

まだ上手に歩けない私は三浦さんに引き上げてもらい、そのまま席まで一緒に戻った。


 お店に残っていた数人の三浦さん目当ての女性からの視線は痛かったけど、この手を離すには威力が足りない。


 普段見れない三浦さんの反応も見れて幸せだし後悔しないつもりでいたけど、席に戻って繭ちゃんの意味深な微笑みとオーナーのニヤニヤ顔を見て、一気に現実に戻された。


「お、お会計希望です…」


 半分泣きそうになりながら上げた手は簡単に却下され、「真穂、夜はこれからよ」と繭ちゃんに捕まることとなる。


 オーナーからのニヤニヤ目線を無視していた三浦さんだけど、私が追加のお酒を選ぶ時に繭ちゃんに牽制を入れた。


「今日の夜、約束あるからあんま飲ませないで」


 意味を分かっている私に、意味を理解した繭ちゃんとオーナーの目線が痛すぎた。


 その後、オーナーも三浦さんもノンアルしか飲ませてくれなくて、「ハーブティーとかあるよ?」なんて気を使い始めて、恥ずかしさで逃げたくなった。





 







 繭ちゃんとお店を出たのは12時を過ぎた頃で、繭ちゃんと一緒に乗ったタクシーで送ってもらって三浦さんのマンションに戻ってきた。


 お風呂を沸かしてお風呂にゆっくり浸かり、スキンケアやボディケア、髪の毛を乾かし終えて、リビングのソファーで体育座りしながら録画していたドラマを見ながら三浦さんの帰りを待った。


 もうすぐ深夜3時を迎える頃、玄関の鍵が開く音が聞こえたと同時に、


「ただいまー」


 三浦さんの声が聞こえた。


 すぐに足音とリビングが開く音に繋がって、三浦さんのところに飛んで行こうとソファーを降りた私は間に合わず…。


 変な体制で「おかえり」というはめになった。


「………」


「……三浦さんを迎えに行きたかった、です」


「返事ないから、寝てると思って急いだ」


 三浦さんは口元を手で隠して、恥ずかしそうに少しだけ赤くなった頬を隠した。


「……えっちする?」


「煽んないで、まじで。余裕戻ってからするから」


 珍しく余裕がない宣言をした三浦さんは私の後ろのソファーに身を沈めるように座って一息ついた。


「お疲れ様」


「ん、ありがと」


「いつもハードな仕事なのに、三浦さんは滅多に疲れたところ見せないね」


「真穂にかっこ悪いところは見せたくないの」


「三浦さんはいつもかっこいいよ」


「………今日は素直だね。俺、手加減しなくていい?」


 隣に座った私の後ろに手を回して顔を近づける三浦さんの眼には火がついた野獣みたいだった。


「……いいよ。続き、してほしい」


 最後まで言い終わる前にキスが降ってきた。


 後ろに倒される重力にこの後のことを意識して、触れる前から蜜口が濡れたのが分かった。

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