第3話

「散々待たされてご立腹なの。答えはわかってるから早く言え」


「分かってるってなに!?」


「返事は1つしかないだろ?早く言え、早く」


早瀬の圧の強さに「えー…」と声を漏らしてしまったが、返事をしようと思っていたのも事実。


返事が1つであることも事実。


告白されたことを忘れて放置してしまったことも事実。


わたしを拘束している腕が緩められ、私の目の前に真剣な顔をした早瀬の顔がやってくる。


「早瀬、わたしも、…涼が好きです」


「…おせーよ」


嬉しそうな顔を隠すように、早瀬が噛みつくようにキスをした。


早瀬のように近づくことに免疫がないわたしは、恥ずかしさから唇を離しそうになるけど、頭の後ろに回った早瀬の手が、離れることを許してくれない。


滲む視界、絡む息と舌、ついていくのに必死なのに、もっともっとと求める気持ちが芽生えたことに気付く。


「……っ、」


恥ずかしさが勝ったけど、離れた早瀬のキスがもう恋しいと感じる自分がいた。


「初めてのキスは焼きそばパンの味でしたってやつ?」


「もっとロマンチックなもの食べてればよかった…!」


「普段からこれしか食ってないじゃん」


「だって美味しいんだもん」


「俺も美味しかったよ。莉乃の焼きそばパン」


「そうじゃないでしょ…!!」


「これから色んなキスを味わえばいいじゃん。莉乃と俺は今日から恋人同士なんだし」


「…うん、そうだね」


「焼きそばパン率高そうだけどなー」


「美味しいからいいんでしょ?」


「うん、莉乃の焼きそばパンだったら大歓迎」


引き寄せられて、また、唇が重なる。







わたしの恋の代名詞は、


「焼きそばパンとデザイナー」。

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