焼きそばパンとデザイナー

第1話

「お前、また焼きそばパン食ってんの?」


耳に届く心地のいい声。


バイト先のパソコンと睨めっこ、売り上げデータを確認していると、早瀬の声が耳に届く。


遅めの昼食として食べてた焼きそばパンを口に咥えたまま振り返ると、スタッフルームの扉を開けたまま立つ早瀬の呆れ顔が見えた。


「もうはあせのふるじはんだった?」


「口から外してしゃべれ、仕事人間。もう俺の来る時間だよ。お昼、今食べてんの?」


口に残った分をもぐもぐ食べて、食べかけの焼きそばパンを食べ紙の上に置いた。


早瀬が背負ってたリュックを下ろしながらわたしの隣の椅子に腰掛ける。


「焼きそばパン美味しいんだもん。インスタントの焼きそばでつくっても美味しいよ」


「野菜もちゃんととれよ?偏食かってぐらい偏ってるのに、太らないのが不思議だよ。細いくせに胸はあるし」


「…!早瀬、セクハラです!!」


「触ってねーんだからセクハラになんねーよ」


「ななななるよ!」


わたしの訴えは右から左に聞き流し、私が見ていた売り上げ画面を早瀬も確認する。


わたしと早瀬がバイトするアパレルショップは、店長がデザイナーを務め、他の社員がサポートするオリジナルブランドを経営。


店長は、わたしの中学時代を支えてくれた家庭教師で、早瀬のお兄さん、瞬くんだ。


早瀬はお兄さんの瞬くんを支える夢をもってデザインの専門学校に進み、わたしは経営学を含めた勉強をしたくて大学進学。


わたしと早瀬の好奇心とやる気を勝って、瞬くんは自分の店舗で雇ってくれた。


大学に通いながら、瞬くんたちの経営や洋服作りを直で勉強し、早瀬は専門学校で学んだ技術を活かして洋服作りそのものを手伝っている。


早瀬も、将来は瞬くんのようにデザイナーとして活躍する夢ももっていて、毎日瞬くんたちと遅くまで残って、あーだこーだ頑張ってるみたい。


お店は2階建ての作りで、1階がショップ、2階が会社になっていて、瞬くんたち社員さんは上にこもって作業していることが多い。


私たちは1階の店舗で接客をしたり、業者さんの対応をしたり、ネットの購入をチェックして発送手続きを行なったりしていた。


今日は平日だけど、立地がいいため、そこそこ人の出入りがあるし、年代問わず長く着れるデザインだから、大学生〜大人世代まで、安定した売れ行き。


作業が落ち着いた宮本さんが上から降りてくれたので、バックヤードでパソコン眺めながら昼食をとっていた。


洋服1つ作るのも、安定した販売をキープするのも大変なことだと思うのに、瞬くんたちの努力と成果につながる発想、デザインは本当にすごいと思う。


スクロールしながら、在庫の不足している商品がないかチェックしながら残りを食べ進めていると、隣からじーーーっと食い入るような視線を感じた。

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