10月
初めまして、君は寂しい人?
第1話
ドキドキ…
普段そんなに緊張しない私でも、こんなときはやっぱり緊張するんだな…なんて実感しながら、お店の扉の前に立った。
―――今日は新しいバイトの初日。
前のバイト先も楽しかったけど、就職する前にもう1つ他のバイトを経験したくて今回のバイト先の面接を受けた。
まだ前のバイト先で勤務しているときに面接を受けたので、限られた曜日でしか受けることが出来なかった。
希望を出した日がたまたま店長が不在の曜日で、わたしだけ特例でエリアマネージャーが面接をしてくれた。
だから、今日、初めて店長に会う。
連絡事項を電話で取り合ったときには、声の印象が若くてびっりした。
怖い人だったらどうしよう…いやいや、一応接客業だしそんな怖い人なわけ…と考えながら扉をくぐったら、目の前に黒づくめのヤンキーが立ってました。
「ひっ…!!」
思わず小さく漏れた声は相手に伝わってなくて安心したけど、心臓は余計にバクバクした。
マネージャーと一緒に待っていてくれたのは多分店長だと思うんだけど、自分のイメージと180度違う人で驚きが隠せなかった。
茶髪の髪の毛にグレーの目をした、顔の小さなイケメンさんは、隠しもせずイライラオーラをまとっていた。
「は、初めまして!今日からお世話になる実蔵ひなたです」
「初めまして。電話では少し話したよね?店長の桐山コウです」
挨拶を返してくれた店長は見た目の怖さとちがって優しかった。
にしても、こんなイケメンなんて緊張する!
わたしと店長のやりとりを見ながらマネージャーも簡単な挨拶を説明を済ませ、後は任せるね、とお店を後にしました。
最初はこの2人は仲が悪いかのかと思ったけど、話している雰囲気はとても仲良さそうだった。
店長から上に着る制服をもらってバックヤードで簡単に着替えを済ます。
これから大丈夫かな、わたしやっていけるのかな?
初日のスタートから少し不安を感じていた。
着替えてバックヤードの扉をあけると、業務用冷蔵庫とキッチンへの入り口の間にできた小さなスペースに瓶ビールが入っていたから籠をイスにしている店長と目があった。
口にくわえた煙草から少し癖のある匂いがする。
「実蔵さんって煙草吸う?」
「吸わないです」
「周り吸うやつばっかだけど平気?」
「はい。自分は吸えないけど、周りの煙草は気になりません。皆って、女性も吸うんですか?」
「吸うよー。っていってもうちの従業員のほとんどは男だけどね」
「へー…そうなんですね」
男ばっかと聞いて少し怖くなった。
店長はシフトを組んでいるみたいで、わたしの教育係りになる先輩が来るまで一緒にそこで待機していた。
立ったままの私にそこのイス使っていいよと声をかけてくれる店長。
本当に小顔で目が大きくて、外人さん?って思うほど整った顔だけど、、制服についた名札の名前は日本名なので外人の血は入っていないのかな。
少しすると長い髪にくりっとした可愛いお顔のお姉さんがすぐ後ろにある裏口から入ってきた。
「え?あ!新しいバイトの子?」
「はい!今日からお世話になります、実蔵ひなたです」
「初めまして、ホール担当の入山めぐみです。よろしくね」
大きな目が入山さんの可愛さを引き立たせていて、まとう雰囲気も柔らかくて素敵な女性だった。
制服に着替えるためにバックヤードに入った先輩に「着替え手伝おうか?」なんて声をかける店長にゾッとした。
この2人出来てる?
確かにお似合いの2人だし、なるべく店長と関わるのをやめておこう。
最初にバイトしたお店が社内恋愛活発で、関係ない私まで被害を受けたことがあった。
もうあんな思いはこりごりなので、職場恋愛はもちろんごたごたに巻き込まれるのも嫌だ。
着替えを済ませた入山さんが出てくると、ドン引きしたのが顔に出ていたみたいで、「もうやめなよー!実蔵さん引いてるじゃん!」と店長に注意をしていた。
「そうそう、実蔵さんの教育係はめぐちゃんにお願いするから」
「え?わたし?桐山くんが担当するんじゃないの?」
「フォローはするけど、あくまで俺は店長だから」
「こんなこと言ってても全然店長らしくないんだけどね」
足を組みなおしてかっこつけた店長だったのに、入山さんに茶化されて雰囲気台が台無しに。
店長はここではいじられキャラなのかもしれない。
入山さんに優しく教えてもらいながら、初日の仕事をなんとか乗り切った。
簡単な休憩に入るときに新しい先輩と顔を合わせた。
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