第41話

「”終わった恋”だよ。もう、大丈夫だよ」


「……」


 納得がいっていない様子のはせくんに、恋愛初心者だけど、思うことを投げてみた。


「はせくんは、しても平気ってわかってて、キスしたんじゃないの?」


 (わたしが、はせくんを好きってわかってるから、嫌がらないってわかってるから、キスしたんだよね?)


 じぶんの口から、核心がつくことを言ってくれないはせくんに、わたしの方から突っ込んでみたけども…。


 はせくんと比べて、恋愛経験は乏しいわたしは、この後をどうしていけばいいか、わからない。


 はせくんの反応を、待つしかない。


 画面越しだと、声と言葉しか頼りにならない状況で…、そんなに長くないと思う沈黙さえも、鼓動を鳴らすには十分だった。


「…わかって、してたよ。」


「っ…‼」


 じぶんが言い出したことだけど、本人の口から聞くと、急激な恥ずかしさがやってくる。


「そういう、じぶんのずるい考えとか、里帆と洸のこと考えるの、面倒になって…。もう、休みたいって、離れたいって思ったんだけど…」


 わたしが自覚しないところで、はせくんがここまで追い詰められていたなんて知らず…。

  

 電話越しのわたしとはせくんの温度感に、背中がひやりとした。


「声、聴くと、だめだ…。好きだし、会いたい。里帆の顔が、見たい…」


 はせくんの弱々しい声を聴いて、無意識に声が出ていた。


「わたしも会いたい!会いたい!好き!好きだよ…!!」


 きゅーーーって締め付けられる胸の痛みも、どくどくと鼓動が激しくなる音も、全部、全部、はせくんのことが好きだって、叫んでる。

 

 はせくんが、好き。

 

 望月くんを好きだったときと、違う感情で、違う重みで、違う形で、好きだって、これが恋だって実感してる。


「はせくん、遠回りしてごめんなさい。好きでいてくれて、ありがとう。わたしも、はせくんが大好き。大好きです」


 時間をかけてしまったから、ずっと、はせくんに助けてもらっていたから。


 今度はわたしがはせくんを追いかける番でもいいと、思った。

 

 わたしの方が、もっともっとはせくんを好きになる自信がある。


 こんなに、感情が揺れ動く恋を、今までしたことが、ない。


 はせくんは、わたしに特別を教えてくれる人。

 

 はせくんに届いてほしくて、力強く言葉にした気持ちは、はせくんにしっかり、届いたかな?

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