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馬渕君の時よりは落胆は少ないけど、もう少し時間をかければ九条君の攻略は可能だったんじゃないかなって思えてならない。
「攻略期間短すぎない?季節ごとに分かれてるにしても、最長で3か月はあるのに!やっぱり不具合じゃないの?完全にバグでしょ!このシステム!いや、九条君も相当なナルシストキャラだったしさー!」
『いいえ、不具合はございません』
……やっぱり。
私の猛抗議はまたしても一蹴されてしまった。
不具合はございません……ってさあ。
胸キュンシーンはいくつもあったけど、結局恋愛とは程遠い全くの見当違いの出来事だったしなぁ。
ゲームの中のキャラなら許せるけど、リアルにあそこまで自分大好きのナルシストがいたら、さすがに好きにはならないわ……。
九条君、カッコよかったけど!
それに……。
『自分を大事にしない人が、輝くようにどう頑張るの?』
この言葉は、かなり痛かった。
まさか、九条君にそんな事を言われてしまうなんて。
『それでは、次に攻略するお相手と季節を選択してください』
「……手越君しかいないじゃん」
あの強烈なナルシストをもう一度別の季節で攻略する気にはなれない。
目の前に現れたモニターの画面を操作して、私は手越君を選択する。
季節は……そうだなぁ。
秋にしてみようかな。
正直、手越君は苦手なんだけど。
最初に説明したけれど、手越君は『黙っていれば』見た目はカッコいい。
口を開けば、歯の浮くようなセリフがポンポン飛び出す、キザな男の子。
しかも女の子なら誰にでも声をかける、いわゆるチャラ男キャラなんだ。
アツいキャラの馬渕君、ナルシストな九条君……。
この2人をこなしたなら、手越君ルートはそこまで苦じゃない気がする。
もちろん、前の2人のようにバグ起こしたキャラになっていなければの話だけど。
馬渕君の時、ハニーとか声をかけられたし、チャラ男はそのままなのかな。
『それでは、頑張って攻略して下さい』
前2人を選択したと同じように、モニターから声がして、目を開けていられないほどのまぶしい光があふれ出した。
乙女ゲーム攻略サイトなしで、いくつも攻略してきた私の本気を見せてあげるんだから。
さあ、かかってきなさい!
……って、九条君の前は意気込んだけど、自信ないよ。
もう本当に、ささやかでいいからハッピーエンドで終わらせて。
お願いしますーっ!
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