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まあ、馬渕君ルート初日に九条君と手越君はいたんだけどね。



っていうか、問題は私の前の席。



九条君ルートになっても、前の席は空席のまま。



私が主人公として動いているのなら、私の前の席が空席なんてありえないはずなんだけど。



一番視界に入る、絶好のポジションなんだから。



とは言っても、今は九条君ルートだからこの空席の謎は解けないだろう。




「さて、これからどうしようかなぁ」




とりあえず今は、九条君に集中しよう。



スマホをしまうと、私は自分の席から立ち上がった。



場面が切り替わらないという事は、何かイベントが待っているわけで。



でも、何をしたらいいのか全くわからない。



教室から出てみれば、場面が切り替わるかもしれない……。



そう思って、私は教室を出てみた。



予想通り、教室から出たとたんにサッと目の前の風景が変わっていく。




「ええ、また?!」




私が立っていた場所は、生徒会室のドアの前。



今度は書類袋も何も持っていないから、何のために生徒会室に来たのかわからない。



九条君に話しかければいいのかな?




「……さっきみたいに、また窓際で鏡に映った自分にウットリしていたらどうしよ」




さっきの光景を思い出して、私は深いため息をつく。



でもいつまでもここで立っているわけにはいかないし。




「よし!」




意を決して、扉に手をかけた時だった。




「私……九条君の事が好きです!」




中から女の子の声がハッキリと聞こえて来た。



まさかの告白の現場に遭遇?!



私は、音をたてないように静かに少しだけドアを開ける。

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