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その彼は、幼稚園の卒園と共に、どこかへ引っ越して行ってそれっきり会っていない。



彼をからかった子たちも、小学校が違ったから、全く知らない。



嫌な事だったから忘れたくて……。



でも、忘れる事ができたのは、好きだった子の名前だけ。



トラウマとなった出来事は忘れようとしても忘れられなかった。



おかげで、17年間一度も彼氏ができた事はない。



……別にいいんだけどね。



だって、私にはゲームがあるしっ!



二次元には、色々なイケメンがいて、どんな私でも好きになってくれるし。



傷つくんじゃないかっていう、恐怖は全くない。



何より、ゲームの中のイケメンは、私をブスって呼ばないしね。



裏切られて、傷つく事だってないから、いつだって胸キュン全開!



オールウェイズ、ハッピー!……みたいな。




♪~♪~♪~



さっきのアプリのエンディングが終わったらしく、曲が変わった。



置いたスマホを慌てて手にすると、今までクリアしたキャラが画面に勢ぞろい。



九条君でしょー、馬渕君でしょー、それから、手越君。



3人ともニッコリ笑って、画面を覗く私に向かって手を差し伸べている。



……何これ。



イケメン3人がニッコリする後ろに人型の黒いものがある事に気がついた。




「え、もしかして、シークレットキャラ?!」




私は思わず画面に向かって叫んでしまった。



恋愛シミュレーションゲームは、ある一定の条件を満たすと、出現するシークレットキャラが存在する。



今まで私がプレイしてきた、他のゲームにも必ずそれは存在していた。

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