第7話

「そう、だから頼む。皆の前で挨拶する事もないからさ!」


私は、色気のないコットンの家着を纏って、「わかりました」と返事をした。

行事を代わりにこなすのも妻の仕事だ、と婦人部の港口さんが言っていたっけ。


選挙の時の大変さに比べたら、まだいい。

あの時は演説に付き添ったり、挨拶回りをしてチラシを配ったり、かなりきつかったもの。


そう自分に言い聞かせ一人、シングルベッドに潜り込んだ。


夫は隣の書斎で資料作り。

子作りは、結婚三年目まで頑張ったけれど、あとはしてない。


これからも、ずっと、こうやって一人で寝る夜を過ごすんだろう。


私は、明日が雨になればいいな、なんて身勝手な事を思いながら眠りについた。

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