敵か、味方か

第73話

「安倍晴明よ、何故、お前は、前世でも現世でも、こんなくだらない

人間のために戦おうとするのだ?」


「お前こそ、何のために、僕の式神たちを自分の味方にしようとしてるんだ?」


「先に、こちらの質問に答えろ。」


「くだらないか、どうかはお前が決めることじゃないだろう?それに僕は、人間のためだけに

戦おうとか思ってるわけじゃ無い。」


「ほぉ、では、何のために?」


「平安の世は物騒だったけれど、現世はあの頃に比べたら平和そのものだからさ。なのに、

お前は、自然災害に乗じて、妖たちを先導し、この国を滅ぼそうとしてるじゃないか。

多くの人間が命を懸けて守ってきたこの国を、お前のようなやつの好きにさせてたまるものか。」


「待ってくれ。自然災害に乗じてと、お前は言ったが、あれは、本当に、わたしの力ではないんだ。」


「じゃあ、誰だと?」


「神……だろうな。」


神様があんな人の命を沢山奪うような自然災害を起こしていると言うのか?

阪神淡路大震災、東日本大震災、一体どれだけの人間が命を落としたと言うのだろうか。

何のために?


俺が化け猫に問いただそうとする前に、喋り出した。


「怒っているのさ、この国を粗末に扱っていることを、地形を勝手に変え、そのくせ、神や仏には

困った時だけ頼ってくるふざけた連中に対して。」


そうか。

そう言われてみれば、化け猫の言う通りだ。

勝手に、都市開発だなんだと言って、工場を作り、その土地を汚染したり、湿地を埋め立てたり

この国の上の連中は好き勝手をやり放題だ。自分たちの懐が潤うなら、何をしたって平気で、

この国に長年言い伝えられている、伝統や文化も勝手に解釈し放題で。


「で、お前は、僕にどうして欲しいって言うのさ?式神を解放しろとでも?」


「もしも、わたしが、お前に勝ったなら、その時は、わたしに協力してくれないか?

式神の解放を頼みたいんじゃないんだ。人間どもに、また信仰心を取り戻して欲しいんだ。

この日本にいる人間どもに。安倍晴明の転生の主がお前なら、簡単だろう?」


「お前さ、そんなくだらない理由で、僕のことを邪魔してきたわけ?前世からの因縁とか関係なく。」


「白猫には、申し訳ないことをしたと思っている。だが、もし、あの時、白猫に憑依してしまわなければ

わたしは、お前に止めを刺されるしかなかったからな。」


「お前、酷いやつだよね。帝の白猫に憑りついて、生きながらえるなんて、最低じゃない?あの猫には

何の罪も無いのに、お前が憑りついたせいで、皆から憎まれる存在になったんだから。

お前はさ、今は化け猫になってしまったけれど、本来は何処の神社か知らないけれど、

神のように祭られていた存在だったんじゃないか?」

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