第24話

言えばいいのに、いつも言えない。

だけど、付き合ってるって言っても

形の上だけだと彼女に言われてるから

言っても本気にされないような気がした。


「1200年前も、私たちは

こんな感じだったのかな?」


「俺の前世の記憶では、こんな感じ」


「皇くんは、良く言えば男らしいけれど」


「悪く言えば、何?」


「堅物って感じかな、あ、でも私、女子校で

高校生の頃、男子と、あまり縁がなかったから

私の、イメージは、一般女子とはズレてるのかも」


「あのさー」


「ん?」


「湊でいいよ」


「あ、名前ね」


「なんか、慣れなくて」


「堅物すぎるのか……。でもさ、綾だって

ガード固すぎるんじゃないの?」


「だって、自分の身くらい

自分で守りたいもの」


「でも、今は俺がいる」


彼は、彼女の目を真直ぐ見ながら

そう伝えた。


「今日は随分、積極的だね」


「いつも、綾を守りたいって思ってる」


「そういう意味じゃなくて、何ていうか

その……口説かれてる?見たいな……」


「これでも、毎回、好意を見せてるつもりなんだけど」


「私と……湊って前世では、絶対こんな

甘い感じにはなってないよね」


「少しは、記憶が甦ってきてるね」


「記憶というよりも、妖魔の退治が仕事だったなら

甘い言葉を囁き合うなんてことは、無理でしょ」


「今の時代は、あの頃よりは、きっと妖魔の数も

少ないし、それにやっぱり平和」


「うん」


「ねぇ……」


「何?」


「前に、湊の頬に触れた時のこと

覚えてる?」


「うん、俺の事仕留めようとか

言ってたやつね」


「あの時、私、本当は湊に惹きこまれそうになってたの」


「引力みたいな?」


「ううん、今まで何人かと付き合ったことは

あるけれど

何か違うって思ってて……。でもね、この部活で、湊を知って

毎回、いつの間にか気にかかるようになってた」


「マジで?」


「そんな自分が怖くて、もしかしたら、湊には

人をあやかす術があるんじゃないかって思ってて

信用しきれなかった」


その言葉を彼は彼女にそのままそっくり返してあげたい

気持ちだった。


彼女に頬を触れられながら、見つめられた時

彼がどれだけ、彼女に惹きつけられたのか

自分に語彙力があるなら説明したいくらいだったから。



「俺は、あやかしの力なんて全然使ってないよ。

ただ、綾に惹かれてるだけ、守りたいだけ」


彼女は、潤んだ目で、再び彼を見つめていた。


「煽るなよ」


「惹かれてるだけ?守りたいだけ?あとは?」


「好きだよ、綾が」


「ほんと?」


「どう見ても、好きなのバレバレだろ」


彼は、赤面しながら、横を向いた。


「ありがと、湊、私も好きだよ」


そう言いながら、彼女が彼に抱き付いた。


彼は、あまりに上手くいきすぎたので

少し躊躇する。


っていうか……。

照れる……。


可愛すぎるわ、綾。


俺にとって

最強だ。



大好きだ


綾。

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