第42話

エレベーターは

2台あって、

ちょうど、上がってくるエレベーターと

降りてくるエレベーターが…


僕らは、

降りてきたエレベーターに乗ろうとした

その時だった。


「雨宮」


と僕の名前を呼ぶ人物が

上がってきたエレベーターから

出てきた。


「桜井?ど、どうしてここに?」


「午後、電話したけど、繋がらなかったからさ」


「あ…」


「ん?何か思い当たる節でも?」


僕が吉田さんに、告白したときだ。

そういえば、あの電話、桜井からだから

またかけ直してくるだろうと思って、

僕からは掛け直さなかったんだった…


「そちらの連れの人は…え、お前、

もしかして、新しい彼女?」


桜井は、僕の会社の男性社員であり、

昔っからの親友だ。


彼にかかれば

僕の女性遍歴はすべて分かるだろう。


「彼女」


と僕が紹介する前に


「初めまして、こちらの会社で

今日から働くことになった、社員の吉田と申します。」


と自分から自己紹介した。


社員の吉田…さんか。


彼氏宣言は、まだ許されないわけか。


「え?お前、いつの間に、求人かけてたの?」


「1月くらい前から」


僕は、せっかく帰りも二人っきりで帰れると

思っていたのに、とんだ邪魔者が入って

面白くない。


だから、ムスッとしながら話していた。


「だから、俺も、あの人もテレワークじゃなくていいって

言ってたのに、忙しいんだろう?」


「二人に戻ってきてもらっても、今は、その頃以上に

忙しいんだよ」


「そっか、じゃあ、昇給とか期待できそうだな」


「あ、吉田さん、俺も、社員の桜井です、雨宮とは高校の時からの

知り合いなんで、言いづらいこととかあったら、

俺を通して言ってくれても構いませんから」


言いづらいことって?


と言いそうになりながら、僕の頭の中は

不安と、嫉妬でいっぱいになる。

僕より後から知り合いになったくせに

馴れ馴れしく話しかけないで欲しい。


彼女は、僕がやっと見つけた

運命の人なんだから。

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